コバエが飛んでいる
タイトルのとおりです。朝からコバエが飛んでおり、武士が格闘しています。
「ぬおっ! ……ぬー……ぬおおっ! おおおっ!」
端から見ると無を相手に拳を振るっているようにしか見えないのですごく怖いです。
「そちらに行ったぞ、大家殿ーっ!」
大げさなんだよ、お前はさー。たかがコバエじゃん。害するわけでもないし、放っておけば……。
次の瞬間、私が飲んでいた牛乳のコップのふちにコバエが止まった。
滅せーーーーーーーーーっ!!!!
「声をあげるのは勝ち鬨を知らせる時のみぞ! かかれ!!」
かくして、ここに無に向かって拳を振るう狂人男性二人が爆誕したのである。
数分後。
「と……捕らえられぬ!」
コバエ相手に大敗北した私達が床に転がっていた。このままだと室内でちょっとした運動をしただけの人になる。運動不足が叫ばれる現代日本人、それはそれでいいのかもしれないがコバエに翻弄された点はいただけない。
そう、このままでは終われないのだ。
「ぬ? 大家殿……それは?」
殺虫剤……1プッシュで室内全域にいる虫を殺す兵器だ。あのコバエには、科学に楯突くとどうなるか身をもって教えてやらねばならん。
念の為ハムスターは別部屋に連れて行ってくれ。できたら風呂場。
「心得た」
ハムスターが避難するのを見届けて、私は部屋に1プッシュタイプの殺虫剤を撒いた。たかがコバエ1匹、されどコバエ1匹。常に勝利は科学と人間側にもたらさねばならないのだ。
「大家殿の様子がおかしいな。酒でも入っておるのか?」
もうそろそろ出ないと遅刻する時間だからちょっとハイになってる。
「はよ行け」
朝から戦を共にした同胞相手になんて言い草だ。
いってきまーす。
そんで昼頃、武士から連絡が入った。
『まだ小蝿が飛んでおるが! 二匹!』
みなさんは、1プッシュ型の殺虫剤でコバエを退治しようとする時はちゃんとコバエ専用のを買ってくださいね。