武士が謎の料理を連呼していた話
「〝痛風ぶるどっぐ〟を食べてみたい」
ある日、帰宅した私に武士がそう告げた。
なんだその可哀想なわんちゃんは。私が常日頃全ての犬に幸あれと願っているとことを知っての狼藉か。
「否、犬は関係ござらん。〝痛風ぶるどっぐ〟だ」
ブルドッグを持ち出して犬に関係ないは通らないだろ。
いや、お前のことだからまた何か勘違いして覚えてるのかな。もしかしてれっきとした食べ物のこと?
「うむ」
じゃあもっと思い出してみてよ。本当はもっと違う名前だったんじゃない?
「……言われてみれば、〝どっぐ〟ではなく、〝だっく〟だったような」
あひる?
「痛風だっく」
なんだその可哀想なあひるちゃんは。私がSNSでアヒルかわいがりアカウントをフォローしていることを知っての狼藉か。
「ううむ、ならばこれも違うのか」
でもダックが関係するならアジア系の料理かな。ひらがなで調べてみて……。
あ。
ねえ武士、もしかしてお前が言ってるのって〝チーズブルダック〟のことじゃない?
「なんだそれは」
お前が探してる料理だよ。
韓国のメーカーが販売してるチーズ風味のインスタント麺。絶対これだろ。
「しかし某が見たものには、ちぃずは乗っておらんかったぞ」
ほなチーズブルダックと違うかー。
チーズブルダックはチーズ言うだけあって、たっぷりチーズが乗っとるからなー。
「だが、辛そうだった」
ほなチーズブルダックやないか。
どう見ても辛いのは韓国料理の特徴や。チーズブルダックやないか。
でもお前、辛いの食べられるの? 大丈夫?
「全ての物事には始まりがあるものだ」
かっこいい言い方してるけど、お前食べられないと判断したら早々に残して部屋の隅に退散するだろ。買ってもいいけど、完食を約束しろよ。
「某の胃は大家殿の胃、大家殿の胃は某の胃」
ジャイアン論法を発展させるな。お前の胃はお前で始末をつけろ。




