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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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こたつを出した経緯

 仕事でめっちゃくちゃ遅くなった。

 月が綺麗ですね。夏目漱石じゃないけど。あれ信憑性微妙らしいけど。そもそも言う相手もいないけど。


 まぁ武士は先に寝てるだろうなぁ、と思いながら、ドアを開ける。多少遠慮して電気をつけないまま部屋に入って、私は気づいた。



 武士が、私のベッドで寝ている。



 ……。


 これで武士が女の子なら、私恋しさにベッドに入りこんできたという方向性の言い訳が成り立つだろう。

 BLものなら、ここからめくるめく夜の情事が始まっていただろう。


 が、ここは少女漫画の世界でもなければ、BLワールドでもない。武士はお目々がキラキラした髪の描き込みハンパねぇ押しかけ女房じゃないし、攻めの反対語は守りです。


 というわけで、私は明晰な頭脳を働かせて状況を推理した。


 部屋にがっつり残る豚骨臭、洗濯機横に積まれたシーツやら枕カバーやら、流し台の空き容器、そして空になったファブリーズ……。


 間違いない! 武士はカップ麺を自分の布団にぶちまけたんだ!!


 ふっざけんなよ!!!!


 ベッドの上でお布団にくるまる武士を蹴飛ばす。が、武士は迷惑そうに唸ってちょっと向こうに寄っただけだった。起きない。

 ウゼェ。


 ――多分、この時の私は疲れていたんだと思う。でなきゃあんな面倒なことはしない。


 私は、押し入れに頭を突っ込んだ。そして、奥の方からガサゴソあるものを引っ張り出す。


 それは、こたつ布団。と、コード。


 普段から使っているこたつテーブルの天板を外し、せっせとこたつ布団を挟み込む。それから、コードを差し込んだ。順番が逆? いいんだよこういうのは適当で。


 風呂……は明日の朝でいいか。もう眠いわ。


 ああ、こたつつけっぱで寝るのは、脱水症状とか火傷とか火事の恐れがあるからオススメしないよ。今の私? 今日寒いから、最初だけつけます。最初だけね。


 私は寝た。おやすみなさい。






 翌朝。目が覚めると、武士がこたつに入りこんできていた。


「おお、大家殿! 昨日はまことにすまんかった!」


 快活に謝るものである。まだ眠かった私は、おうおうと片手を振った。


「しかし風呂に入らぬまま寝るとは感心せんな。人間、そういった日々の些細なことこそきっちりこなしあげてこそ、健全たる生活を、ひいては心を整えていけるわけで……」


 かかと落としじゃー!!!!


 その口で! よくも! そんなことを言えたな!!


 オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!



 武士の足を一通り足蹴にして、満足する。武士にはしっかり布団を干してシーツ等々を洗っておくように言いつけ、私は風呂に向かったのであった。

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