診察までの待ち時間にて
総合病院だからか、診察までの待ち時間は比較的長いように思う。とはいえ急いで診てもらわないといけない身でもないため、大人しく待機するのみだ。
「ここも随分と見慣れたものだ」
しみじみと辺りを見回しながら武士は言う。
「あのお触れも何度目にしたことか。某、ここに置かれてある様々な本に目を通したものだが、ついに読むものがなくなった時にはぼんやりあれを眺めたものよ」
お触れ? ああ、院長からのお知らせか。
病院の壁に貼ってあるポスターはつい見ちゃうよね。わかるわかる。
……いや、そうでもないな。最近はスマホばっか見てるわ。
「無粋であるのう」
無粋かどうかはわかんないけど、言われてみればあんまよくないかもね。目を休める意味でも、スマホを置く時間は積極的に作ったほうがよさそう。
でも実際待ち時間でできることってなくない? 本も家に置いてきちゃったしさー。
「では某と尻の取り合いをしよう」
え、絶対やだ。
ごめん、反射的に拒絶したけど何の話? 尻を? 取り合う? 誰の尻を?
「まずは某から。横綱」
横綱の尻を取り合うの???
……あ、しりとりか! クソッ、今回気づくのにだいぶかかっちまった!
横綱の〝な〟ね。えーと、梨。
「尻」
結局尻に帰結してんじゃねぇか。
り、り……漁師。
「尻」
二回も返ってくるな。ルール違反してまで尻を擦りたいか。
「尻を……擦る……!?」
異常者を見る目で見るな。お前が言い出したんだ、お前が。