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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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病院の付きそい

 普段は鬱陶しいくらいに元気いっぱいな武士だが、実はまだまだ通院中だ。とはいえ、ありがたいことに今は小康状態で、一ヶ月に一度の診察で済んでいる。

 そして今日。いつもは武士一人で通院してもらうのだが、たまたま有休が取れたので付き添うことにした。

 その旨を武士に伝えたところ……。


「どうした、大家殿。気でもおかしくなったか」


 武士は江戸時代の人間なので、たまに現代のコンプライアンスに触れることを平気で言うのである。

 おかしくねぇわ! オメェの通院に付き添ってやるってんだよ!


「心配無用! 幾度となく通った道だ。迷うことはない」


 迷子の心配はしてねぇーッ! 心配してるとしたらオメェの体調だよ!! 言わせんな恥ずかしい!


「構わぬのにー」


 などと言いながら笑う武士を軽く蹴飛ばしながら、私は出かける準備をした。




 私は幼少の頃から大きな怪我や病気をしたことがなかったので、あまり病院に縁がなかった。だから総合病院に来ると、なんとなく緊張する心持ちがする。


「では行ってくるぞ。大家殿はここに座って待っておるがよい」


 慣れた様子で検査に向かう武士を見送る。この場所は小児科に近いのか、親に手を引かれた幼いこどもが何度か私の前を通った。


「待たせたな」


 お、もう終わったのか。


「うむ。血を採るだけであったからな。某、此度こそ一度も声をあげんかったぞ」


 おお、偉いな。

 ……。

 待て。普段は注射のたびに悲鳴をあげてんの?


「しかしけったいなことであるのう。某の身のことであればいくらでも某の口から教えてしんぜようというのに、先生は『血に聞いたほうが早い』と申すのだ」


 血って全身を巡るから体の不調を示す指針になりやすいらしいね。さもありなんよ。


「ふぅむ、血がそれほど物知りであるとは知らなんだ。これより先、某に物忘れが生じた際には我が血に行方を尋ねることとする」


 そういう方向の物知りではないよ、血。

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