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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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方向音痴

私は結構な方向音痴だ。

 一旦建物の中に入ると、出てきた時にはどちらが北か皆目見当つかなくなる。何ならどちらから来たのかも怪しいぐらいだし、正直常に私の正面を北としてほしい。

 だから、外出時にはカーナビが欠かせないのだ。実にありがたい文明の機器である。私ときたら三途の川でも迷子になりそうだから、よければ一緒に埋葬してほしいとすら思う。


 ぶっちゃけ武士も似たような方向感覚なので、この私の言葉は大いに賛同されるだろうと思ったのだが……。


「大家殿、次は右に曲がるがよい」


 武士を乗せて運転していたところ、ふいにそう指示された。

 え、なんでよ。この道はいつもまっすぐ行くじゃん。


「そうだが、ここで右に曲がるほうが近道なのである」


 そうなの? え、でもカーナビではここ行き止まりになってるけど……。


「左様。しかし、この道は以前より工事を行っておっての。それがつい先日完成し、今では自由に行き来できるようになっておるのだ」


 へー、マジか。それは知らなんだ。

 でもまっすぐ進みますね。


「なにゆえ!」


 カーナビに乗ってない道は怖いんだよ……! 私じゃリカバリーできないからな。


「某がおるではないか! その先の道も案内しようぞ。心安く頼るが良い」


 なんでお前そんなに自信満々なんだよ。脳みそに最新のカーナビでもインストールできた? 普段はWind◯ws Meみたいな性能を伺わせるのに。


「悪口であることはなんとなくわかるぞ。だが構わぬ。なぜならば大家殿は今、某の命をも預かる身……。慎重にならねばならぬゆえ、気が立つのも理解できる」


 心が広いな。


「しかしひとたび車から降りれば立場は同じ。目にもの見せてくれよう」


 やべぇ、終わった。降車後全力で逃げないと。


「とにかく、某はこのあたりを散歩することもあるのだ。それゆえ、道にも明るいのである」


 へー、そうなんだ。こんなとこまで散歩に来ることあんだね、お前。

 ……。

 ここ、車で30分かかる場所なんだけど?


「そこを左に曲がればまんじゅう屋があるぞ」


 お前普段どんだけお散歩してんの? あ、まさか道に迷いまくった結果、練り歩くことになって逆に詳しくなったとか……!


「そろそろ車を止めぬか?」


 嫌です。

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