来年度のスケジュール帳
ありとあらゆるカレンダーがもう10月って言ってるんですがマジですか? F1に匹敵するような速度で時間が過ぎ去っていく。加齢とともに時の流れが速くなるとはよく言うが、ここまでとは思ってない。体と心が今でも7月頃に取り残されている。
なにはともあれ、10月になってくるとそろそろ考えねばならないことがいくつかある。インフルエンザのワクチン接種と、来年のスケジュール帳の確保だ。
「来年のことを言えば鬼が笑うと聞くが、こればかりはそうも言ってられんな」
私と武士は文具店を訪れていた。
「なにぶん、大家殿は正月が明けたら働きに出ねばならぬ。書き留めねばならぬことも多いだろう」
そうね。1月始まりのスケジュール帳を買ったらすぐ1月5日に『仕事始め』って書こうかな。早めに心の準備をしておきたい。
「おいたわしや……」
言っとくけどお前を食わせるためでもあるんだからな?
「しかし帳面にこれほど種類があろうとは。大きさや色、厚さや柄まで様々だ。これでは選ぶのも一苦労だろう」
時代は多様性よ。誰かにとっての適切は、誰かにとっての過剰や過少ってね。みんな〝ちょうどいい〟を探してるから、需要に合わせる企業も大変だ。
でもそのおかげで、私にぴったりなスケジュール帳を見つけられるってわけだけどね。
「成る程のう。そういえば大家殿は去年も帳面を買っておったな。今年も同じものを買うのか?」
いや、妙に使いづらかったから変えようかなと。
「言っておることが違うではないか」
何なら毎年違うスケジュール帳を買ってる……。
「ぴったりを見つけられておらんではないか」
私はスケジュール帳難民……。
去年はデザインで選んだからな。今年は機能性で選ぶのがよさそう。
「ほう、ならばこちらなどどうだ? 月ごとに色分けがなされておる」
そのサイズ、鞄の中でかさばって使いづらかったんだよな……。
「ならばこちらは? 日々格言が書かれており、気持ちが引き締まるぞ」
スケジュール帳に私のものじゃない思考を入れたくない……。
「……」
……。
「真っ白な帳面を買うがいい」
見捨てないでぇ!




