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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
659/677

この年になると逆に見る目が死んでくる

 先日、客先で優しそうなおばちゃんがいるなーと思ったら、まだ若いロングヘアのお兄さんでした。話しかけるまで本当に気づかなかったので、彼の野太い声に真顔で3センチほど飛び上がったことをここに白状しておきます。お兄さんには「突然のしゃっくりです」と伝えましたが、多分ごまかせていません。


「わかるぞ」


 わかってくれるか、武士よ。


「某も先日行った銭湯で、どう見ても年寄りの女だと思った者が男であった」


 それは心臓が跳ね上がるな。

 っていうか、声かけたの?


「うむ。『おぬし、間違っておらんか?』と声をかけた」


 チャレンジャーだな。


「心なしか周りの者もそわそわとしておったから」


 そうしたら男だったと。


「そう。『わしが何を間違えとる?』としわがれた男の声で返された。其の者はただの肥えた爺だったのだ」


 事実なんだろうけど悪口に聞こえちゃうのはどうしてかな。で、お前はどう言い訳したの?


「今まで黙っておったが、某、不測の事態に少々弱い」


 それは知ってるけど。


「ゆえに、寸刻口ごもったあと『桶』と答えた」


 パニクりすぎだろ!


「するとその爺、『おう、この桶お前さんのだったか』と快く某にその桶を渡してくれてな。某は、その日一日ずっと胸が痛んだのだ」


 そ、そうか……いい人でよかったな、その爺さん。


「かたや、某は桶泥棒になるところであった」


 嘘が下手だからって徹しようとすんな!

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