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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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声優になってみよう(なれない)

 ある休日。武士がやおら立ち上がり、言った。


「ならば、某は声の役者になろう」


 前々回のあらすじ……武士の承認欲求が留まるところを知らなかった(訳:ぬいぐるみになりたいとか育成ゲームに参入したいとか言い出した)。


 声の役者? ああ、声優のこと?

 無理だろ。


「思っても口に出すでない! 夢は起きて見るものだ!」


 寝て見るものだろ。じゃあお前ずっと寝言喋ってんのか。

 声優さんに憧れる気持ちはわかるけど、すげぇ大変って聞くよ? 演技力や声の魅力はもちろん、最近は歌唱力や容姿、ダンスやメディア対応まで求められるんだって。


「ほう……」


 な? お前には無理……。


「こなせる」


 こなせるかぁ!! 承認欲求だけじゃなく自己評価も天井知らずか!!

 えー? でもまあそこまで言うなら試してみようか。最近はボイスドラマとかシチュエーションボイスとかってのもあるしね。


「しちゅー……」


 ノー、シチュー、ノー。


「今宵は腹が減っておろう? おぬしの皿、某がこの身をもって温めておいたぞ……」


 あっシチューから連想して突然始まった。でも悲しいことにキモい。気が利かなくて斬首される豊臣秀吉。


「無礼な」


 皿を体で温める人間のほうが礼を無くしてるだろ。


「次」


 おう、次。


「夕餉にするか? 体を拭くか? それとも……」


 お、聞いたことのあるノリのフレーズ。


「ま・わ・し♡」


 まわし? まわし??? 力士の話か???

 ふざけるんじゃないよ。次。


「かわいいだけじゃだめでござるか~?」


 あっだめ! 不快!


「端的な罵倒」


 いかんよ、お前これは。声優を目指そうものなら背後からたたっ斬られる。


「そこまでか? 目指すだけでそこまでなのか?」


 お前は大人しく自分の声を録音して一人で悦に入ってなさい。


「ろくおん」


 そういややったことないか。ほら、スマートフォンのここ。この機能を使えばお前の声を録音してあとで聞けるんだよ。


「ほう。試しにやってみようか」


 その後、スマートフォンから流れてくる自分の声に絶望した武士は二度と声優になりたいと言わなくなったのである。

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