育ててちょんまげ! 武士育成ゲーム!
前回のあらすじ……武士がぬい活にぬにぐるみ側として参戦しようとしたのを食い止めた。
「しからば次の手を考えねばならぬ」
必要なくね? 何がお前をそこまで社会へと駆り立てるんだよ。長らく働いていないから労働が恋しくなったか?
「聞けば、育成げぇむなるものが長きにわたり人気を博しておるそうだな」
ああ、うん。ゲーム機を気軽に持ち運べるようになったあたりから、爆発的にバーチャルペットってジャンルが流行ったと思う。
「それだ」
どれだよ。
「ばあちゃん弁当」
バーチャルペットな。なんだその妙に温かみのある弁当。
「某は、その流行に名乗りをあげたいと思う。皆に某を育成してもらうのだ」
?
あ、ごめん。あまりに理解できなくて全細胞がフリーズしてた。
それは……えー……育てる側にどんなメリットが?
「育成げぇむを損得で考えるやつがおるか! 無償の愛を注ぐがよい!」
一般的な育成ゲームとしての意見ならわかるけど、自分を育てるゲームへの発言だから図々しことこの上ないな。愛の搾取じゃん。
「かようなことをほざけるのも今のうちよ……! 赤子の某の愛くるしさに胸を打ち砕かれるがよいわ!」
ベビー時代から育てていくタイプの育成ゲームね。じゃあ行動や食事によってこども期や青年期の姿が変わったりするの?
「うむ。頻繁に声をかければたくさん話す某に。まめに掃除をすれば綺麗好きな某になるぞ」
そこは結構ちゃんとしてるね。そんなら育児放棄した場合は? 死ぬ?
「死なぬ! 某は心優しい男であるからな、後味が悪いようなことはせぬぞ」
まあ確かに。それに、多少緩いほうがプレイする側としてはありがたいね。
「その際は、手遅れになる前に大家殿が現れて某を引き取る仕組みにしよう」
せめて私の許可を取ってから私を組み込んでくれない?
「ちなみに、今後新たに某を育成したい場合は赤子の某からやり直してもらう」
じゃあもう無限に私のもとに日本全国から様々な年代の武士が集まっちゃうじゃん。困るんだけど。
「所詮げぇむの話であるから」
それもそうか……。
いや、そもそもお前の育成ゲーム自体が与太話なんだよ。
一番大切なツッコミをし忘れ、今日も私はリアル武士育成をしているのである。