武士、ぬい活参戦
ぬい活……それはぬいぐるみを愛でて生きていく人々の活動を指す言葉。元々テディベアなどを対象に大人でもぬいぐるみをかわいがる人はさほど珍しくはなかったが、キャラクターやアイドルに似せた〝推しぬい〟が進出してきたこともあり、近年幅広い世代に浸透を見せている。
その余波は、当然うちにも……。
「このたび、某も〝ぬい活〟なるものに食い込みたいと思う」
正座し、膝に拳を置いた武士が神妙な顔で言った。
そうか……。武士は元々ぬいぐるみや人形が好きだし、今更? って気もするが、引き続き節度を守ってする分にはいいんじゃないかな。
「かたじけない。大家殿の許しを頂戴したこと、まことに喜ばしく思う」
いいってことよ。
「では、早速某のぬいぐるみを作るところから始めよう」
そっち?????
お前が推される側になるってこと?????
「まずは……そうだな。全身にふかふかの毛を生やすべきだな。手触りがよくないことには始まらん」
いい目の付け所だと思うけど、人間形態のぬいぐるみがベースなら難しくない? 人間なんて毛のない猿って言われてるぐらいなのに。
「かまわぬ」
かまわないんだ……。
「加えて、愛嬌を強調するために豊かな表情でなければならん。うむ、目と口を大きくすべきだろう」
ああ、それはいいかもね。特に目が大きいと第一印象は良くなる気がする。口まで大きくすることはないかもだけど……。
「耳まで裂けた口としよう」
お前の自己認知どうなってんの?
「更には様々な色を用意すべきだ。箱を開けるまでどれが入っておるかわからぬ……。富くじと同じよ。この不安と期待が降り混ざった心が某への愛を止まらなくさせるのだ」
ブラインドボックス形式でいくんだ。またメル◯リが潤っちゃうな。
っていうかだいぶ嫌な予感してきたんだけど、どんな名前で売り出す気だよ。
「らぶぶし」
アウトアウトアウト!!!!
「いずれは、けぇぽぷ(※K-POP)の御仁にも協力いただこうぞ」
やめろーーーーっ!!!! 某ぬいぐるみにいっちょ噛みしようとすんな!!!!