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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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制汗剤

 昨日の話を書いていたら思い出したことがあった。武士が初めて制汗剤を使ったときのことだ。

 あれはそう、やはり死ぬほど暑い日だった。それでも武士は鍛錬のために神社に行くと言って聞かず、しゃーなしに私は彼の体に制汗剤を吹きかけたのだ。


「死ぞーーーーーーーっ!!!!」


 大げさな。


「某の身に何をした大家殿!? 背中が燃えたが!? 否、これは……氷……!?」


 未知の刺激に脳が混乱しているようだ。

 大丈夫、体に害はないよ。スースーするだけ。


「スースー!? 某の背中に氷が貼りついておるが!? 」


 いや、別に氷は貼りついてないんだよ。

 でも涼しいだろ? 熱中症対策になるかと思って。


「ぬおお、ぞくぞくする。一体何を使ったのだ」


 制汗剤だよ。


「生還罪?」


 生きて帰ってきてしまった罪? 違うよ。


「精悍罪?」


 お前がたくましい男過ぎて罪? 違うよ。


「静観罪?」


 静かに状況を見守っていた罪? 違うよ。


 っていうかお前、私の善意を罰と認識してんの?


「この暑い中、某が鍛錬に行くと言って聞かんから」


 心配はしてるけど架空の罪を作って罰を与えるつもりはないよ。失礼だな。

 まあでもこれで多少は熱中症も防げるだろ。いってらっしゃーい。


「うむ」


 よしよし、大人しく出ていったな。

 あ、でも制汗剤って基本運動したあとに使ってたイメージだな。運動前に使ってもよかったんだろうか。念の為調べてみるか……。


 ……。


 あ!!? 制汗剤は発汗を抑えるから体に熱がこもって熱中症になりやすい!!???

 武士ーーーっ!!!! 帰ってこい武士ーーーーっ!!!! シャワー浴びて制汗剤落としてから改めて鍛錬に向かってくれ武士ーーーーーっ!!!!!!


 なんとか私の制止は間に合い、武士は制汗剤を落として無事鍛錬に向かうことになりました。

 武士は怒ることなく、爽やかに笑いながらこう言いました。


「つまり大家殿は静観罪にを免れたということだな」


 やかましいわ。大変失礼いたしました。

 賢明なる皆様におかれましては大丈夫だとは思いますが、お気をつけを。

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