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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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絵の上達

 最近、武士の絵が少し上手くなった。


 以前から練習をしていたので、その成果が出てきたといったところだろう。首から肩にかけての不自然さが減り、体の厚みも表現できているように見える。何より全体的に“こなれ感”が出ているのだ。これもたくさん描いてきた証左だな。

 だが、特筆すべきはやはり……


「肩の筋肉、いとおかし」


 相変わらず、どいつもこいつもムッキムキなのである。

 百歩譲って人間ならわかる。ミケランジェロの天井画みたいになってっけどな。だが無生物にまでそれを適用する意味がわからねぇ。なんでリンゴから筋骨たくましい両腕が生えてんだよ。


「絵というものは、よく見ることが肝要なのだ。しっかりと両のまなこで見つめ、そのものの形や陰影を捉える……。そうしてこそ、ありのままを紙に写し取ることができるのだ」


 じゃあなんでリンゴから筋骨たくましい両腕が生えてんだよ。


「今より足に取り掛かる」


 お前には何が見えてんだ。

 ああっ、リンゴが走り出した。もうおしまいだ。どこに行くんだ、このリンゴも武士の絵の方向性も。


 そして少し離れた場所では、カエルとうさぎが共にピクニックを謳歌している。しかしこっちも大概マッチョだ。こんなの鳥獣戯画じゃなくて超重ギガだろ。


「うむ、よく描けた。大家殿、どうだ、この仕上がりは」


 もはや絵の完成度のこと言ってんのか筋肉の仕上がりのこと言ってんのかわかんねぇな。


「どちらもだ」


 どちらもって何? ナイスバルク! リンゴの血管、大江戸線!


「もう一声!」


 筋肉山脈7000メートル峰!


「もう一丁!」


 ふくらはぎにお弁当箱つけてんのかい!


「まだまだ!」


 お前の蒸気で冬が消し飛ぶぞ!


「よし」


 なんなんだよ、この時間は。

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