だから寒いんだって
寒い。
え? 数話前にも同じ導入をした? 知るか日に日に寒くなんだよ。暖かけりゃ「ぬくい」から入るよ。寒い方が悪い。私のせいにするな。
とにかく寒い。
いつもなら、武士は鍛錬だのなんだの言ってとっくに布団から出ているのだが……。
「……」
今朝は、布団饅頭が床で震えていた。
「寒い」
な、寒いよな。
「しかし腹が減った。厠にも行きたい」
あー、わかる。ほんとどっちも行きたくないよな。
布団の中だけで全部済ませられればいいのにな。無理か。無理だな。
TOTOあたりそういうの開発してくれりゃいいんだけど。いや調べたらもうあるような気もするな。どうだろ。
だがそれを検索するためだけに、布団の外に手を伸ばしてスマートフォンを取りたくない。寒い。
しかし、ずっとこのままというわけにもいかないだろう。
……。
なぁ、武士。なんか体の血行が恐ろしく良くなる小話とか知らない?
「……“隣の家に囲いができたとな?” “へい、そうである”」
……。
応答の「へい」と塀をかけたダジャレか。
寒い。却下。ミカン取ってこい。
「ならぬぞ大家殿。布団の中でミカンを食べるなど……!」
知らんよ。ここは私の家だ。治外法権、私が法律。はい「お布団でミカン食べてもいいよ法」過半数の賛成により可決。制定。施行。
ミカン取ってこい武士。
「二人しかおらぬから半分も何もなかろう!」
うるせぇな。私が法だっつってんだろ。
布団でくるんだ足で武士を蹴り、奴も負けじと布団アタックで応戦する。そうこうしているうちに日も昇り、体も温まって動けるようになるのだ。
休日の朝なんざ、こんなもんである。異論は暖かくなってから受け付けることにする。