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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
635/676

広がる領地、狭くなる居住空間

 一人暮らしをしていた時は当然掃除やら洗濯やらを一人でやらないといけなくて、そのために部屋の清潔さの許容度が下がりまくって一時期えらいことになってた。服が部屋の片隅で山盛りになってたもんな。

 だけど武士が来てからは違う。日々こまめに掃除や洗濯をしてくれるおかげで、明らかに部屋の快適さが違う。服はクローゼットに戻り、床に物が転がっていることもない。

 だが……。


「本日はタコ助の領地を広げるとするか」


 大きな画用紙が床に広げられている。そこに鎮座しているのは赤いタコのぬいぐるみであるタコ助だ。武士は楽しげに鼻歌を歌いながら、タコ助の周りにクレヨンで建物を描いている。

 ……ねぇ、どんどこさぶれって何?


「否、トゥントゥントゥンサーフールである」


 正しく聞いてもわかんねぇな。何だよ、それ。最近のお前ずっと口に出してっけど。


「それよりも大家殿、タコ助にふさわしき家はどんなものであろう」


 ええ? 知らんよ。

 でもタコだし、やっぱ水はあったほうがいいんじゃないの?


「然り! ならば海が必要であるな!」


 武士は颯爽と立ち上がると、ウキウキとした足取りでどこかへと向かった。帰ってきた武士が手にしていたのは、とある箱。


「こちらを海に見立てるとしよう」


 そう言うと、武士は箱の中に入っていたビー玉をせっせとタコ助の周りに並べ始めた。


「タコ助は時折海に戻り、その身を鮮やかな朱に戻すのである」


 タコ、そんな生態だったっけな。


「他には台所も必要であろう。タコ助は食べることをまこと好むから」


 自分で作ってもらうセルフサービス型かぁ……。


 こうして武士はタコ助の領地を思う存分広げ、その分私達の居住スペースは狭くなっていくのである。

 というか、元は私の領地なんだから私の許可を取ってから分譲してくれよ。


「タコ助は類稀な武功を立てた身であるからして」


 ぬいぐるみがどんな武功立てたってんだよ。勝手に褒美を取らせるな。

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