最終日
そういうわけで、実家に顔を出して帰路についているという事情です。え? 実家の話がなかったって? だってあんまり面白いこともなかったし……。結婚の催促されたのと高知に戻ってこいって言われたぐらいで……。
「大家殿は、いずれ親元に帰るのか?」
――帰る途中に立ち寄ったサービスエリアにて、海を臨みながらのランチ中、武士にそう尋ねられた。
いずれ……いずれ、なぁ。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。正直、帰るべきなんだろうなとは思うけど、今はあんまり考えたくないなーって感じ。
「長男たる身であれば、家を継がねばならんのでは?」
一般的にはそうだね。お墓もあることだし……。
でも家業があるわけじゃないし、私にだってそれなりのキャリアがある。それに私が高知に帰るとなれば、お前もどうするんだよ。いよいよ自立して一人で家を借りるか?
「え?」
え?
「某は大家殿についていくが」
なんでだよ。自立しろよ。
いやいや、高知に帰る選択肢はナシだろ。お前突然江戸から現代に来たんだぞ? だったらまた突然江戸時代に戻されるかもしれない。そうなった時に高知にいたら大変じゃない?
「ううむ」
よく考えろー。お前の人生なんだから。
「……」
……。
「思うに」
うん。
「大家殿の意見も必要ではないかと」
私の?
「うむ。某の進退は大家殿の人生に関わる話でもある」
えー。
……まあ、私はなんでもいいよ。お前がどこに行っても。
「そうか」
うん。自由に生きればいい。
「そうか」
行きたい場所に行けるよう、応援ぐらいはするけどさ。
「うむ。わかった」
うん。
そんな会話を武士とした。結局保留と先延ばしばかりで何も答えは出ていないな。
現状維持である。まあ解決しないといけなくなった時に考えればいいか。
帰りは安全運転。何事もなく無事に帰ってきて、泥のように眠ってからハムスターを迎えに行きました。皆様、数日お付き合いいただきありがとうございます。