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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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げに愛らしき文具の世界

「しいる、たのし」


 先日武士が家の中を100均グッズで便利にしてくれたのですが、その際にシールで彩りを添えることを覚えましてね。それからというもの、シール集めに勤しんでいます。

 これはあれだな……行ってみるか……。


 文房具店!


 ノート、万年筆、ボールペン、インク、はんこ、マスキングテープなどなど! 個性豊かで魅力的なあらゆる文具が一同に介する! そういったものが好きな人ならラインナップを見ているだけで心躍ること間違いなしだ!

 というわけでやってまいりました。武士は今、私の隣で目を回しています。


「これほどとは……! これほどとは……!」


 大丈夫?


「目がいくつあっても足りんぞ!!」


 大丈夫じゃなさそうだな。ゆっくり見て回ろう。


 かわいさやオシャレさに全振りした文具もあれば、「おっ」と目を見張るような便利文具もある。気になったのは“ノートのように使えるバインダー”だ。ノートを留めるリングが四つしかなく、しかもそれも上下に二つずつだけなのでノートを使う時に手が当たって邪魔になることがない。その上くるっと折り返せるので省スペースでの作業が可能だ。これいいな。買おうかな。買おう。

 武士はどうよ? 何かいいのあった?


「大家殿……」


 どうした、雨に濡れたチワワのように震えて。


「げに愛らしき印章が売られておるが……」


 印章? あ、はんこ?

 最近ブームなのかよく見るよね。いろんな色とか使えるんだろ?


「使ってよいのか!?」


 なんで驚く?


「罰せられぬか!?」


 そんなわけなくない?


 しかしよくよく話を聞いてみれば、江戸時代におけるはんこの重要性といったらそれはもう高かったそうだ。で、庶民は黒いはんこしか押すことができなかったらしい。

 そりゃ驚くな……今やはんこ用インクも緑やら青やら非常にカラフルなことになってんだから。


「なるほど……そうであったのか」

「して、このみかんは何家の家紋であるか?」


 家紋じゃないんだわ。お前が好きなシールと同じノリで使える、ただのはんこなんだわ。


「?」


 あ、カルチャーショックに首をかしげている!


「つまり……某は、これらはんこを好きな時に好きな場所へ好きな色で押せると?」


 そうなるな。


「……」


 天を仰いじゃった。


「ここにあるはんこ、全てを我が物にしよう」


 だめに決まってるだろ。




 結局、武士が選んだのはサカバンバスピスのはんこでした。「この朗らかな顔をした魚がよい」とのことです。朗らか……言われてみればそうかもしれない。

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