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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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紙風船

 何もする気が起きねぇ。


 うだるような暑さ。殺意すら感じる日差し。存在感のある紫外線。夏よ、ちょっとBEGINとMrs.GREEN APPLEに気に入られてるからって何してもいいと思ってない? エアコン貫通してくるのはちょっと想定外です。


 残業に脳をやられているのも相まって、私は一人床に転がっていた。すると武士が覗き込んできたのである。


「あいわかった。某が風船を用意してやろう」


 え、私の何を理解してくれたら風船が用意されるの?

 わからないが、ツッコむ気力もないのでそのまま寝転んでいた。すると何やらがさごそ聞こえてきたかと思うと……。


「ぬん」


 ぽすっと私の頭に軽いものが落ちてきた。

 これは……あれか。紙風船か。


「買ってきた」


 なぜ……。


「某がまだ稚児であったころ、時折病にかかってな。床で苦しむ私のもとに父上が持ってきたのがこの紙風船だった」


 へえ。


「父上は言った。外で遊べぬのはつまらぬであろうからこれで遊ぶといいと。普段は厳しい父上であったが、この時ばかりは紙風船で遊んでくれたのを覚えている」


 いい話じゃん。いつもお前が話してくれる内容を聞くに結構ボンクラな父ちゃんだから、なんだか見直したわ。


「その時の某は酷く頭が痛かったので、早くいなくなってほしいと思っていた」


 やっぱボンクラ親父じゃねぇか。息子の病状ぐらい最低限把握しとけよ。


「まあ、そのような流れがあり……」


 その流れを踏襲しちゃうとこの紙風船嫌がらせでしかないんだが?


「しかし大家殿の頭は痛んでおらんだろう?」


 そうだけど。


「ならば遊ぼう。これは某の……えー……あべんじゃーである」


 リベンジって言いたいのかな? アベンジャーも復讐者って意味だからそんなに離れてはないけど。


「では早速一発目、参るぞ! 構えよ大家殿……ぬんっ!」


 パァン!

 紙風船は武士に強めにはたかれたせいで、破れた。


「……」


 ……。


「二枚目」


 予備あるんだ。

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