水族館に行こう
東京スカイツリー。高さ634mを誇る日本一の電波塔だ。建築当初こそ「シンボル的な意味合いでは東京タワーに負けるよね……」といった雰囲気があったように記憶しているが、今では立派な名所のひとつとして東京の景色に馴染んでいる。
「うむ……何度見ても思わず拝みたくなるような心持ちになるな」
武士もこのとおりである。でっかいってのはそれだけで嬉しくなるものなのだ。
「では早速参ろうぞ!」
おう!
このスカイツリーのてっぺんから東京の街を見下ろしに……
「ぺんぎんたちに会いに!!」
すみだ水族館のほうなの!? 確かにスカイツリーの中にあるけどさあ!!
そういうわけで、すみだ水族館へと向かった。
広いプール水槽でペンギンたちが優雅に泳いでいる。あるものはよちよち歩き、あるものは尻尾を振り、あるものはのんびりと横たわり。マゼランペンギンという種類だそうだ。
「混ぜごはん……」
マゼラン。
そしてすみだ水族館のペンギンといえば、すみだペンギン相関図が有名だろう。知らない方はぜひ調べてください。すみだ水族館にいるペンギンたちの赤裸々な関係性が覗けます。しかも毎年律儀に更新してくれるので、去年はひとりぼっちだったペンギンが無事お嫁さんを迎えていたりなど、その成長を見ることもできる。
「ほう、それは面白いな。つい応援してしまいたくなる」
略奪愛や破局も生々しく追えるよ。
「ぺんぎんの世界も生半可なものではないな……。お、一匹近づいてきた。実に愛らしいではないか」
その子、以前まで親友の女の子がいたんだけど、親友の旦那さんを好きになってしまってからというもの友情にヒビが入り、今では元親友に喧嘩をふっかけるまでになったらしい。
「修羅場ではないか」
あと、お前さっきペンギンを匹で数えてたけど、一応ペンギンって鳥だから羽で数えるといいよ。
「え?」
え?
「……鳥ということは、この者は空を飛ぶのか?」
飛ばない。
「泳いでおるが?」
鴨とかも泳ぐだろ。
「鴨は飛びもするが?」
でもペンギンは飛ばない。空を飛ぶより泳ぐほうに体が進化しちゃったんだ。
つかお前、ペンギンのぬいぐるみ大事にしてたじゃん。むしろ今まで鳥って知らなかったの?
「あの体躯で鳥と気付ける者はおらんだろう」
それはそうかもしれない。雀が卒倒しそうなほど大きいもんな。
ちなみにエンペラーペンギンになると100センチを余裕で越え始めるぞ。
「もはや大家殿の甥よりも巨大ではないか」
ほんとでかいよね。飛ばなくていいと開き直って完全に腰を落ち着けてる。
「鳥ではなくでかごんと名乗るべきだ」
そこは自分で決められるようなことじゃないから……。