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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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砂漠

 連日まあ暑いこと暑いこと。

 だが〝砂漠のバラ〟とも称されるアデニウムという観葉植物にとっては、むしろ嬉しいぐらいなのかな。


「前々から気になっておったのだが」


 アデニウムにざばざば水をやりながら武士が言う。


「その砂漠というのはなんぞや」


 おん(驚きの声)。

 でもそうか、江戸時代の人間は砂漠って知らないのか。そうだな……見渡す限り一面の花畑を想像してごらん。


「うむ」


 その花畑をすべて砂場に置き換えてくれ。以上。


「ははは、大家殿。冗談が過ぎるぞ」


 冗談でもなんでもない。それが砂漠なんだ。


「しかし、なにゆえそのような土地が生まれたのだ? よもや頭から砂だらけだったというわけではあるまい」


 それは……。


「確かに某も、海のような砂場で山を作ってみたいと思ったことはあるが……」


 こどもたちがよってたかって砂を持ち寄ってきたんじゃないんだよ。えーと、待ってね。今調べるから……。

 あ、そもそも砂漠っていうのは砂だらけの土地を指すんじゃなくて、雨が少なくて植物がほぼ生えない土地のことをいうんだ。知らなかった。


「つまり飢饉に苦しまされる場所ということか」


 理解が早いね……と思ったけど、江戸と飢饉は切っても切り離せない関係か。

 だけど今は便宜上、砂漠は砂だらけの土地としておくね。


「便器?」


 トイレの話はしてねぇぞ。

 とにかく、砂漠といえばサハラ砂漠。海の向こうのこの砂漠について調べてみよう。


「おお、大家殿の言うとおり見渡す限りの砂だ。これはラクダだな」


 お、よくご存知で。


「うむ。畜生園で見た」


 動物園な。今だとちょっと問題になるから早めに適応していこうな。

 ええい、話が進まん。まあこのサハラ砂漠も、最初は緑があって泳ぐことができるような水もあったらしいんだよ。


「ほう」


 でも気候が変わってね。そのせいで雨が降らずにカラカラに乾燥するようになってしまった。それで数百年数千年と風に吹かれた地表は、ひび割れ、やがては砂ばかりになったんだと。


「ほほう。ならば同じことが起こればここもそうなるかもしれぬのか?」


 そりゃそうかもだけど、サハラ砂漠みたいな完全な砂になるには途方もない時間がかかりそうだよね。


「ふうむ……」


 なんだ? 地球温暖化についてついに関心を向け始めたか?


「ちきゅ……おんなか……?」


 女性の話はしてねぇぞ。

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