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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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七夕とそうめん

 昨日は七夕でしたね。例年だと梅雨にかぶるので生憎の空模様であることが多かったのですが、今年は星空を見上げられた人が多かったのではないでしょうか。


 皆様は、星に何をお願いしましたか?

 私はもちろん……。



 金金金ェッ!!!!!!!



「風流が死に絶えたか」


 そうめんをすすりながら武士が言う。うるせぇ! 願うだけならタダだ!!

 ああ、そうめんがこんなにもうまい。夏はやっぱりそうめんに限るな。だが茹でる過程があまりにもつらいのが難点だ。どうしてあんなに湯気が出るんだろう。

 しかし、黙々とそうめんをすすっていた武士が、ふと難しい顔をした。


「とはいえ……もう少しガツンとした味のものを食べたい気がするな」


 お?


「さりとて、むつこいものを食べる気分ではない。むむう、某もいよいよ年であるか」


 これは料理に対する愚痴ではない。今の気持ちをありのまま述べただけだろう。

 そして、今の私はこういった要望を聞いてやりたい気分だった。なんたって七夕の日だ。ささやかな願いぐらい叶えてやろうじゃないか。


「つまり今の大家殿は彦星殿であると?」


 織姫でもある。


「一人二役……?」


 さあ、その手に持っている御椀をお貸しなさい、武士!


「早速織姫が出てきおった」


 まずは、この薄くなったつゆにめんつゆを足すわよ!

 そこにごま油をイン! からの、混ぜご飯の素〝うめこ〟をほどよく投入!

 さあ、召し上がってごらんなさい!


「ついぞ織姫しかおらんかったな。しかし、これだけで味が変わるのか?」


 いいからお食べ!


「うむ。……! こ、これは! 油のおかげでこってりとし、かつ、ごまの風味が食欲を刺激する! その上この梅のふりかけよ! 麺に絡めばさっぱりとした後味でいくらでも食が進んでしまうではないか!!」


 ウフフ……効いたわね、うめこが!

 さあ、どんどんお食べなさい! 今日はヤケクソ気味にそうめんをゆがいたわよ~!

 ところで武士、あなたは七夕にどんな願いをしたの?


「大家殿が早く元に戻りますように」


 貴重な願いを使うほど不快だったってこと!?

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