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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
596/676

自転車、更にその後

 悲報。武士、まだ自転車に乗れない。


「うぬぬ……しかし、恐ろしいのだ。大家殿……」


 いつもの大雑把さなどどこへやら、自転車にまたがる武士はすっかり縮こまっている。


「何度もばたんと転んでしまったらもういかん。自転車はまこと重いのだ。某は手足にぶつけたら実に痛いと学んでしまった……」

「それに、どうしても、こう……足を回せぬのだ。足置きが重くてな……」

「ぬぬう……やはり某にこの車は乗りこなせぬのであろうか……」


 ちょんまげが萎れるほどしょげてしまっている。乗りたい気持ちはあるのだろうけれど、自分が自転車に乗れるイメージがないのだろう。

 思い込みって結構大事だ。たとえ周りからできないという評価を下されていたとしても、本人にできるビジョンが見えていれば上手くいくことがある。反対に成功率は十分見込めていたのに、自信がなかったせいで失敗する場合も多いもんな。どうせやるなら、勇気をもってやるべきだろう。


 と、ここまではいつぞやの自転車練習の際に学んだはずだが……。


「ぬーん。ぬーん」


 一度手痛い失敗をしてしまうと踏ん切りがつかないのだろう。武士はゆらゆらとゆっくり横に揺れていた。不気味な光景だ。SNSにアップしたらワンチャンバズるかもしれない。

 だが私の承認欲求が満たせても、武士が自転車に乗れないのではいけない。そう思った私は、人類の叡智を頼ることにしました。


 YouTubeの自転車解説動画です。


「なるほど、まずは転ぶ練習をするのか……」


 その動画によると、まずは転ぶ恐怖を軽減させることが大事なのだそうだ。ペダルに片足をかけ、もう片方の足はパッと地面から離す。するとどちらかに傾くので、慌てず傾いたほうの足を出して転倒を防ぐ……とこういう理屈だ。

 どうだ、武士?


「う、ううむ……ええい、ままよ!」


 おおっ! 足を離した! えらいぞ!!


「ぬぬ、ぬぬぬぬっ!!」


 すげぇ! 抜群の体幹とバランス感覚でどちらにも倒れない! あれこれもう自転車普通に乗れてるくない?


「そいやぁっ!!!!」


 おおーっ! 倒れる前に同時に両足を地面についた!!


 ?


「はあっ、はあっ……! 大家殿! 某、やれたぞ!!」


 ?

 うん……うん?

 やれたっちゃやれた……うん?

 まあ……嬉しそうだし、ええか……。

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