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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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ボタンつけ

 なあ武士、空いた時間でいいから私のシャツのボタン直しといてくんない?


「ぼたん? それを直したら一体大家殿の何が起動するというのだ?」


 スイッチのボタンじゃねぇよ。服についている留め具だよ。


「はて? なんのことだか……」


 ボタンをスイッチと認識できるほどの知識を持つやつが、服のボタンを知らないわけないだろ。さては面倒だからやりたくないな?


「お針はおなごの仕事ゆえ」


 今の時代それ言うとエルボー・ドロップされても文句は言えないんだぞ。


「反則技ではないか」


 なんで知ってんだよ。




 ……とまあ、上記のやり取りがあったのも最初のほうだけで。最近の武士は以下のとおりである。




 なあ武士、空いた時間でいいから私のシャツのボタン直しといてくんない?


「うむ、よかろう」


 お、いい返事。ありがたいね。確かにお前、ここんとこちょこちょこ縫い物してるもんな。


「ふふ……己の手で少しずつものが出来上がっていくのは実に愉快であるぞ。大家殿もやってみるといい」


 そうだね、また時間のある時にやってみようかな。それじゃよろしく頼むわ。


「任されよ」


 ~夜~


 武士ー、ボタンつけできた?


「無論である。こちらだ」


 おう、仕事が早いね。どれどれ……。

 あれ? これ今までのボタンと種類が違うね? このボタンをつけてくれって渡したはずだけど……。


「だが、服の前を留めるのに支障はないはずだぞ」


 確かに支障はないけど、これ……。


 スナップボタンだよね?

 穴にボタンくぐらせて留めるタイプじゃなくて、パチンと凹凸をはめ込んで留めるタイプのボタン。


「気づいたか」


 気づくだろ。明らかに異色なんだよ。

 普通のワイシャツのはずが一箇所だけ様子がおかしいことになってんじゃん。


「なんでも百円で売ってくれる店があろう。あの店で売られておる、針と糸がなくてもつけられるぼたんはもうそれしか置いておらなんだ」


 じゃあこれ針と糸使わずに仕上げたってこと? すごいしありがたいけど、やっぱボタンには空気読んでもらって他のボタンと足並み揃えてほしいんだわ。針と糸でもう一度やり直していただけませんか。


「面倒である」


 今朝のお前、己の手で少しずつものが出来上がっていくのは実に愉快であるとか何とか言ってなかった?


「んぬう~。やむをえまい。ぽぽよ、仕事が入ったぞ」


 ハムスターにはできないだろ。やりたくないならやりたくないとはっきり言いなさい。

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