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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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あじさいを見に

 いきなり蒸し暑くなったり雨が降らなくなったり、かと思えばまた降ったりと忙しない気候だ。それでも、夏特有のパキッとした青空が垣間見えるのは嬉しい。私はあの空の色が好きだ。

 だが、6月は6月である。ゆえに。


 我々は今、あじさいの某名所に来ていた。


「右を見ても! 左を見ても! あじさいまみれであるぞ! まことに眼福!」


 そして武士は今日もはしゃぎにはしゃいでいる。さっきすれちがった小学生より元気だ。

 しかしテンションが上がるのももっともだろう。いい景色だ。青や赤紫、白に桃色といった色とりどりのあじさい達が並び、よく見る丸い形のあじさいだけではなく、山間部で見られる小ぶりな花が特徴的な山アジサイも植えられている。

 また、広場では屋台も出ており、芳ばしい香りが食欲をそそった。私はみたらしだんごがいいな。


「ふふ……大家殿は花より団子というわけだな?」


 ここで言う花って桜じゃないことあるんだな。

 いやいや、みたらしだんごはあとでいいよ。まずはじっくりあじさいを見て回ろう。


「だが、その間にだんごが売り切れるやも?」


 それはないだろ。向こうだって商売しに来てんだから、午前中で売り切れるわけない。


「しかし、あまりに美味で何度も買う者が数多現れたとしたら?」


 大丈夫だって。みんなだんごを食べに来たんじゃなくてあじさいを見に来てるんだから。


「よもや、大家殿の見込み違いということも?」


 なんだよお前。みたらしだんご食べたいのかよ。


「否」


 違うのか。


「あんだんごが良い」


 なんなんだよ。駆け引きにしたってしょうもなさすぎるだろ。


 結局だんごを買って、ベンチに座ってあじさいを眺めながら食べることと相成った。それにしてもいい気分だ。青い空の下にあじさい。これだって花見には違いない。


「うむ……これは良いな、大家殿」


 うん。


「二本目に参ろう」


 あじさいじゃなくてだんごの話かよ。花より団子はお前のほうじゃねぇか。

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