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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
587/677

社内報

 会社とは一匹の巨大な生き物だと感じる時がある。社員はその生き物の手となり足となり血となって、忙しなく駆け回り日々命を紡いでいくのだ。

 だから、一見無意味に思えるこれにも相応の意義がある。そうに違いない。

 でないとやってられねぇ。


「おお大家殿、珍しいな。帰りてのちにまだ労働を続けているとは」


 残念ながらコレ労働じゃねぇんだ。なぜなら給料が出ないから。


「ぬ、そうなのか?」


 そう、今の私は、社内報作成のために自宅にて作業をしていた。

 社内報――社員の数名がインタビューに答え、社長が今後の抱負を語り、営業成績のよかった部署を褒め称える冊子。もしかするとこれ、今どき珍しくなってしまった慣習じゃないか? はよ廃れろ。

 悪態をつく私だが、武士は何やら興味深げに近寄ってきた。


「ふぅむふむ、なれば瓦版を作っておるというわけか。面白そうではないか」


 お? じゃあ変わってくれよ。私はもう苦痛で今にも倒れそうだからさ。


「某が作ってよいのか?」


 よいよー。むしろやってみてくれよ。

 ここにある写真と取材文は好きに使ってくれていいからさ。素材は「いらすとや」でよろしく。


「うむ! では大家殿はしばし休んでおるがいいぞ!」


 そうさせてもらうわ。はー、ありがたいもんだね。今のうちにカルピス飲もう。氷とか入れて。ちょっと濃い目で。

 台所に立ちながら、武士の作業を横目で眺める。武士は真剣な眼差しでパソコンと向き合っていた。


「刮目せよ、これぞお屋形様より賜った感状……と」


 待て待て待て待てお待ちなすって。


「なんぞ、大家殿」


 なんぞじゃないよ。お前今、何の項目作ってたの?


「お屋形様による書状を取り上げようとしておったが」


 お屋形様ってなんだよ。


「それが某にも読み方がわからんでな。やしろのおさ? なる者であるからして、お屋形様と呼ぶべきではないかと推し量ったのだが」


 やしろのおさ……やしろのおさ……。

 あ、社長か! なるほど! それ読み方はシャチョーです!


「あなや、そうであったか。ならばとく直すとしよう」


 うんうん、頼むわ。


「刮目せよ、これぞ社長様より賜った感状……」


 ごめん、やっぱだめかもしんない。見出しがあまりにも武士だわ。

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― 新着の感想 ―
むしろ読みたい、 案外受けそうwww 無責任な個人的感想です、 ごめんなさい。
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