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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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お紅茶

 ほうじ茶が好きだ。

 温めて飲むとほんのり甘くておいしい気がする。だからたまに心の余裕がある時は、お湯を沸かしてほうじ茶を作って飲んだりする(普段は麦茶を雑に大量生産し冷やしている)。


 しかし、今日に限っては違う。会社の人から紅茶を分けてもらったのだ。

 正真正銘のティータイムである。私は優雅なひと時を演出すべく、朝からホットケーキを焼き紅茶を用意していたのだが……。


「ただいま某が鍛錬から帰ったぞぉーっ! 早速手洗いうがいを……なんと! 大家殿、それは甘きふわふわ焼き菓子ではないか! ありがたくいただくぞ! しかしその前に茶で喉を潤しヌワーーーーーッ!!!!??」


 ……走り込みから帰ってきた武士が、怒涛の勢いで紅茶に口をつけ、もんどりを打った。急過ぎて止めることもできなかった。


「これはなんぞ、大家殿!? 知らぬ茶だ! いかような草を摘んで煎じたのだ!?」


 その辺の草むしって入れてねぇんだよ。それは紅茶っていうれっきとした西洋のお茶。日本のお茶とはまた違った香りの豊かさを楽しんでくれ。


「コウチャ……」


 いいから手洗いうがい! あとシャワー!


「ぬんっ!」


 武士は大人しく体を清めに行った。しばらくして戻ってくると、私がカップに入れた紅茶に鼻を近づけスンスンと嗅いでいた。


「珍妙な香りがする」


 慣れるといいもんだよ。つか調べたら江戸時代の人も飲んでたっぽいね。外国の人と関われるような人に限るけど。


「ほう」


 つまり今、お前は将軍様に献上されるようなお茶を飲んでるってことだ。


「!!!?????」


 めちゃくちゃ驚きおる。


「なっ、のっ、ほっ、そっ、某は、なんという畏れ多きものを目の前に……!!」


 今更過ぎない? それを言ったらお前が毎日ダラダラやってるソシャゲなんか、将軍様見たことも聞いたこともないよ。


「謹んで頂戴いたす!」


 すっかりかしこまっちゃった……。

 お、一口飲んだ。飲む前に何回か回したな。茶道の礼儀だろ、それ。


「……」


 改めて聞くけど、お味はいかが?


「結構なお手前で」


 お前最初その辺の草っつってたよな?

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