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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
58/676

焼きそば

 武士が料理を覚えた、なんて言うもんだから、

 そんなら晩飯は頼もうかな、とか返しちゃって、

 まあ当然腹を空かせて帰るわけじゃん。


 まさかカップ焼きそばとは思わないじゃん。


「見ろ! こうしてお湯を捨てるのだぞ!」


 シンクに熱湯を流してベコン! と音を鳴らしながら、意気揚々と武士は言う。

 知ってる。それ独身男性生活者の基本のキだよ。


「ぬあぁ! 火薬がぁ!」


 しかも失敗してんじゃねぇか。

 火薬の小袋を入れっぱなしで三分置いたな、アイツ。


「……では、こちらは其のものにするとして……」


 しかし案外律儀なヤツである。

 それをシレッと私にソイツをよこそうものなら、二度とオムライスを作ってやらない所だった。命拾いしたな、武士よ。


 そして武士は二つ目のカップ焼きそばを手に取る。そのままお湯を捨てようと傾けて――。


「あ」


 あ。


「……」


 ……。


 ぶちまけた。

 シンクに、焼きそばを。


「……」


 こっち見んな。


「……“そおす”は味が濃ゆいから、分からぬと思うのだ」


 そう言うなり、武士はシンクに落ちた焼きそばを掴んで容器に戻す。ソースをかけ、箸でぐりぐりと混ぜた。

 一瞬の沈黙。

 ヤツは、シレッとカップ焼きそばを私に突きつけてきた。


「できたぞ」


 歯ァ食いしばれ武士。




 うん、でも、勿体ないよね。シンクも綺麗にしてたしさ。

 以上の理由で、落ちた焼きそばは武士に押し付け返したものの、それらちゃんと全て腹の中におさめた我々なのだった。

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