ブレイキン
武士がブレイクダンスを知ってしまった。
「ぬおおおおおおおおっ!!!!」
もうだめだ。この狭い我が家に、背中を床につけてぐるぐる回る成人男性(ちょんまげ付き)が爆誕してしまった。もう二度とカーテンを開ける日は来ないだろう。犬神家の逆さ足がお目見えするからだ。
「おんっ!!!!」
転んだ。いや、最初から寝っ転がっているのに転んだってのはおかしいな。回転が止まった。
「気分が悪いぃ……」
そりゃそうだろうな……。
「だが、かの鮮やかなる技を習得する日まで某は止まらぬ」
これ以上はやめなよ。ブレイクダンスをするより先に、内臓が雑巾絞りみたいになっちゃうよ。
「構わぬ」
構わんことあるか。
「いいや、芸の道というものはそうでなければならんのだ。自らを犠牲にせねば、なんだ、その……ぶれ? ぶり? ぶりだん……ぶり踊り」
ブレイクダンスな。
「ぶりタンス」
ブレイクダンスな。
「ぶりーくだんすは我が物にできんのだ」
惜しいが見逃してやろう。ほら、ちょっと休憩しな。お水入れてあげるから。
「かたじけない」
いえいえ。
で、まだやるの?
「うむ! もう少しで何か掴めそうなのだ!」
マジで?
「むむ……むむむむむ! きたきたきた! きたぞぉ!!」
おお、ついにきたのか!?
「うむ! すまぬが、某少々雪隠にこもるがゆえ!」
吐きそうになってんじゃねぇよ! もう今日はやめときな!
「江戸に帰った暁には殿にお見せするのだ」
たたっ斬られるよ!!




