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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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運動会

「力試しが開かれておるそうである」


 そう武士が言った。

 力試し……?


「腕自慢と呼ぶべきかもしれん」


 そんな血気盛んなイベントがこの平和な街で行われてるの? 聞いたことないんだけど。


「とく行くべし」


 まあいいよ。面白そうだし。

 二つ返事で請け負い、向かった先で行われていたのは――


 小学校の運動会だった。


 力試しっちゃ力試しだけどさー!


「ぬおおおお! 見るがよい、大家殿! 某の友人たちが走っておるぞ!!」


 そういえばお前の友達小学生だったね。よっしゃ、応援しよう! 声の限り!

 小学生とはいえ、六年生ぐらいになるとほんと大きいな。迫力もすごい。そういえば、昔小学校低学年だった頃に間近で見た六年生の100メートル走はおっかなかったなぁ。


「ゆけー! みちる殿! 走り抜くのだ!!」


 武士は声を張り上げタオルを振り回して応援している。フェスか?

 そして種目は移る……。


「ぬ、あれはなんだ? 皆が集まり組み上がり始めたぞ」


 騎馬戦だね。三人が馬になって、その上に乗る一人が他の騎馬と帽子を奪い合うんだ。


「なんと……! 某らの精神が根付いておるではないか!」


 そうかな……そうかも……。


「東軍! 西軍! 両者気張るがよい! 数が互角ならば気概が勝負を分けるぞ!!」


 あ、武士の周囲にいる人たちがざわめき始めた。そうだよね。ガチで武士っぽいのが応援してるんだもんね。なんかのデモンストレーションかと思うよね。

 残念ながら何もかもガチである。よろしくお願いします。


「ぬ、おおおおおお!! なんという凄まじい攻防だ! かようなもののふあらば、将軍様も安泰であろう!」


 いねぇんだ、将軍は……。


「ところで総大将はどの者であるか?」


 いないんじゃないかな?


「?」


 「?」じゃないよ。これ運動会だよ。そこまでがっつり戦はしないよ。


「否、この熱気はもはや戦と呼んで差し支えないだろう」


 確かに。思わず手に汗握るね。


「ぬあ! 大家殿、次は大人による綱引きであるぞ! 自由に参加していいそうだ! 某、行ってくる!」


 武士が楽しそうで何よりなのである。

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