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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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じめじめするね

 梅雨に入ると、洗濯物が乾きにくくなる。うちもついに乾燥機つきドラム式洗濯機を導入すべきかなと考えたが、値段を見て臆しやめた。

 仕方ない。今年も水とりぞうさんを置きまくるか……。


「あるいは、某が舞うかだな」


 雨乞いの逆?

 なに? 除湿機能つきの舞でもあるの?


「わかるのだ……。今某が舞えば、雲は吹き散らばりお天道さまがまろびでると」


 巫女の血が流れてる人?

 でも、そこまで言うならやってもらおうかな。


「うむ、任せよ!」


 晴れなかったらてるてるぼうずの代わりにぶら下がってもらうからな。


「うん?」


 とにかく、舞ってもらうことになった。準備が必要とのことだったので、しばし待つ。数分後、腰の周りにタオルを数枚ぶら下げ、両手にハンガーを持ち、頭に紙皿を乗せた上裸の武士が現れた。

 この時点で、私はとんでもなく無為な時間を過ごしてしまっているのではないかと疑わざるをえなかった。


「始めるぞ」


 何を? あ、舞をか。


「ご無沙汰しておる、お天道さまよ~……」


 おごそかにしめやかに、武士がクソ狭い部屋の中で回転している。しかしぽぽ(ハムスター)がびっくりしないよう、すり足だ。まさかハムスターに武士抑制効果があるとはな。


「この舞を見よ、この舞を見よ」


 案の定尻は振る。そこだけは譲れないようだ。

 武士いわく、武士の優雅な舞を見たいがために太陽が顔を出すから、結果的に雲が晴れるという心算らしい。どこの大御神だよ。

 だが、肝心の空模様は……。


「……」


 当然、びくともしなかった。


「……ご無沙汰しておる、お天道さまよ~……」


 うわ、まだやるの?


「この舞を見よ、この舞を見よ」


 尻を振るな。お前の舞見たくなさにむしろ雲が厚くなったらどうしてくれるんだ。そっちのほうが全然ありうるだろ。


「ご無沙汰しておる、お天道さまよ~」


 もうループ入った! 祝詞短っ!

 だからやめろって! てるてるぼうずの代わりにお前を吊るすぞ!

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