ごめんね、こんな日記で~梅雨~
いつもより少しだけ早く起きる。いい気分だ。普段は武士にやってもらっている洗濯物を干す作業だが、今日は私が代わりにやるとしよう。
洗濯機から服をかき出し、かごに詰める。よいしょと持ち上げて、ベダンダに続く窓を開けた。
瞬間、むわっとした湿気が私を包んだ。
おーう。
おおーう。
イッツア梅雨ワールド。
「ただいま帰ったぞ」
そしてちようど武士も鍛錬から帰ってきた。振り返る。じっとりと汗をかいた武士と目が合った。
「某は明日にも苔むすだろう」
苔人間を家に置きたくはないなぁ……。風呂入ってきなよ。
「うむ」
しかし、こんな天気ではとても洗濯物は乾かないだろう。今日は部屋干しだな。
「梅干しとな?」
言ってないよ。
「今日はおかかの気分」
知らねぇよ。早く風呂入れって。
「腹が減った」
わかった、わかった。洗濯物は後回しにしてご飯作っとくから。
「ぽぽよ、聞いたか。大家殿は実に気の利く男よ」
ハムスターに話しかけてないで早く行けって。
それにこの時間はまだ寝てるだろ、ぽぽは。
「夜にはあれだけ元気なのにな……。大家殿よりもよく走っておるぞ」
すーぐ私を引き合いに出す。ハムスター、一日に10キロ以上走るらしいからマジで私より走ってるよ。
「しかし梅雨には困ったものよ。雨は好きだが、どうもこの蒸し暑さは堪える」
そうだね……。
「思うに、いめぇじを変えねばならん」
そうだね……。
え、何イメージって。
「ほれ、夏は実に爽やかな歌が多いのに、梅雨にまつわる歌はしっとりしておるではないか」
そりゃな。
「大家殿。爽やかな梅雨の歌を作ろう」
無理があるだろ。
……。
まあ、作ってみろよ。
「つーゆつゆつゆ昆布つゆ! つーゆつゆつゆかつおつゆ!」
「おいしさっ♪ ここに極まれり~♪ ただよう香りに釘付けの鼻♪」
「つーゆつゆつゆ昆布つゆ! つーゆつゆつゆかつおつゆ!」
そのつゆじゃねぇ。