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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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ごめんね、こんな日記で~梅雨~

 いつもより少しだけ早く起きる。いい気分だ。普段は武士にやってもらっている洗濯物を干す作業だが、今日は私が代わりにやるとしよう。

 洗濯機から服をかき出し、かごに詰める。よいしょと持ち上げて、ベダンダに続く窓を開けた。


 瞬間、むわっとした湿気が私を包んだ。


 おーう。


 おおーう。


 イッツア梅雨ワールド。


「ただいま帰ったぞ」


 そしてちようど武士も鍛錬から帰ってきた。振り返る。じっとりと汗をかいた武士と目が合った。


「某は明日にも苔むすだろう」


 苔人間を家に置きたくはないなぁ……。風呂入ってきなよ。


「うむ」


 しかし、こんな天気ではとても洗濯物は乾かないだろう。今日は部屋干しだな。


「梅干しとな?」


 言ってないよ。


「今日はおかかの気分」


 知らねぇよ。早く風呂入れって。


「腹が減った」


 わかった、わかった。洗濯物は後回しにしてご飯作っとくから。


「ぽぽよ、聞いたか。大家殿は実に気の利く男よ」


 ハムスターに話しかけてないで早く行けって。

 それにこの時間はまだ寝てるだろ、ぽぽは。


「夜にはあれだけ元気なのにな……。大家殿よりもよく走っておるぞ」


 すーぐ私を引き合いに出す。ハムスター、一日に10キロ以上走るらしいからマジで私より走ってるよ。


「しかし梅雨には困ったものよ。雨は好きだが、どうもこの蒸し暑さは堪える」


 そうだね……。


「思うに、いめぇじを変えねばならん」


 そうだね……。

 え、何イメージって。


「ほれ、夏は実に爽やかな歌が多いのに、梅雨にまつわる歌はしっとりしておるではないか」


 そりゃな。


「大家殿。爽やかな梅雨の歌を作ろう」


 無理があるだろ。

 ……。

 まあ、作ってみろよ。


「つーゆつゆつゆ昆布つゆ! つーゆつゆつゆかつおつゆ!」

「おいしさっ♪ ここに極まれり~♪ ただよう香りに釘付けの鼻♪」

「つーゆつゆつゆ昆布つゆ! つーゆつゆつゆかつおつゆ!」


 そのつゆじゃねぇ。

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