表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
57/677

フレンチトースト

 フレンチトーストを! 作ります!


 作り方は簡単! まず卵と牛乳を一対一ぐらいの量で混ぜる! ハイ混ぜたね!? じゃあ次! 一口サイズに切った食パンをぶちこむ! 大体五枚切りか六枚切りがちょうどいいぞ( 主観)! ばっちりひたひた浸したら、油を引いたフライパンにドーン! 表裏を適当に焼いて、皿にデーン! 砂糖ドバー!


 はい。


「うまい」


 うん、良かった。


 今日も今日とてタダ飯をかっ喰らう武士は、朝からの糖分摂取にほくほくと喜んでいた。


「砂糖のじゃりじゃり感が良い」


 そうなんだよ、頭っから卵牛乳と混ぜといてもいいんだけどさ、じゃりじゃり感が好きでつい後からかけちゃうんだよ。

 美味しいだろ。ハハハ。


「しかしどうしたのだ、大家殿。何故朝からこのような豪勢なものを……」


 尋ねる武士に、少しだけ顔が引きつる。


 ……いやあのね。フレンチトーストってさ、あれ元々傷んだパンをどうにかこうにか安全に食えないかなって生み出されたメニューらしくてさ。


「うむ」


 ……うちのパンもね、ちょっと放置してたらあっさり消費期限過ぎててね。


「うむ」


 火を通せばまだイケんじゃないかなーって。


「ほう」


 つまりまあ、残飯処理飯なんだよ、今日のメニュー。


「ほおー」


 怒られるかと思ったら、逆に感心された。武士はもぐもぐと食べ進めながら、私に言う。


「このように食えるものが溢れかえっているというのに、食べ物への敬意を失わずもったいないと最後まで食べきる。やはり大家殿は人間ができておるなぁ」


 お褒め頂き光栄である。今後とも精進したい所存である。


 だから私は、昨日野菜室の奥から見つけた芽が生えまくりもはや種芋と化したジャガイモのことは武士に言わず、フレンチトーストのひとかけらと一緒に飲み下すことにしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ