フレンチトースト
フレンチトーストを! 作ります!
作り方は簡単! まず卵と牛乳を一対一ぐらいの量で混ぜる! ハイ混ぜたね!? じゃあ次! 一口サイズに切った食パンをぶちこむ! 大体五枚切りか六枚切りがちょうどいいぞ( 主観)! ばっちりひたひた浸したら、油を引いたフライパンにドーン! 表裏を適当に焼いて、皿にデーン! 砂糖ドバー!
はい。
「うまい」
うん、良かった。
今日も今日とてタダ飯をかっ喰らう武士は、朝からの糖分摂取にほくほくと喜んでいた。
「砂糖のじゃりじゃり感が良い」
そうなんだよ、頭っから卵牛乳と混ぜといてもいいんだけどさ、じゃりじゃり感が好きでつい後からかけちゃうんだよ。
美味しいだろ。ハハハ。
「しかしどうしたのだ、大家殿。何故朝からこのような豪勢なものを……」
尋ねる武士に、少しだけ顔が引きつる。
……いやあのね。フレンチトーストってさ、あれ元々傷んだパンをどうにかこうにか安全に食えないかなって生み出されたメニューらしくてさ。
「うむ」
……うちのパンもね、ちょっと放置してたらあっさり消費期限過ぎててね。
「うむ」
火を通せばまだイケんじゃないかなーって。
「ほう」
つまりまあ、残飯処理飯なんだよ、今日のメニュー。
「ほおー」
怒られるかと思ったら、逆に感心された。武士はもぐもぐと食べ進めながら、私に言う。
「このように食えるものが溢れかえっているというのに、食べ物への敬意を失わずもったいないと最後まで食べきる。やはり大家殿は人間ができておるなぁ」
お褒め頂き光栄である。今後とも精進したい所存である。
だから私は、昨日野菜室の奥から見つけた芽が生えまくりもはや種芋と化したジャガイモのことは武士に言わず、フレンチトーストのひとかけらと一緒に飲み下すことにしたのだった。




