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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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n回目誕生日

 今日は私の誕生日です。

 拍手!


「うぬ!」ぱちぱちぱち


 ついでに武士の誕生日も今日祝うことにしました。

 クラッカー!


「ぬん」パンッ!

「ぬあああああああああっ!!!!」←クラッカーにびっくりした武士


 はい、そういうことでね、おごそかにしめやかに祝っていきましょう。ハッピバースデートゥーミーアンドユー。


「法被?」


 お祭りで着るやつじゃない。あれもめでたいことには変わりないけど。

 やっぱまずはケーキだよね。武士、切り分けてよ。


「うむ」


 うんうん、まずは真ん中から真っ二つ! 順当だね。


「できたぞ」


 成人男性とはいえ、ホールケーキ二分の一はきつくない?

 いや、食べられなくはないけど。でもこのあとケンタッキーなフライドチキンも控えてるし、余力は残しておきたいじゃん。


「しかし、こうして見ると内容は冬の栗祭りとほぼ同様であるな」


 栗……? あ、もしかしてクリスマスのこと言ってる? 栗要素一個もねぇだろ、あの祝祭。

 でも料理がかぶるのは仕方ないんだよ。こちとらこどもの頃からご馳走といえばコレって胃に刻み込まれてるんだ。さ、ケーキを貸しな。ほど良い大きさに切ってやるから。


「某にとってほど良いとは、まさにこの大きさゆえ」


 バケモンかよ……。まあいいや、誕生日だし。食え食え。

 そうだ、お前にプレゼントがあるんだよ。


「ぬ!? あの大家殿が某に!?」


 お、なんとなく不適切な表現があった気がするな。まあいいや、誕生日だし。これこれ。


「ぬおお……毎年かたじけない。開けてよいか」


 どうぞ。


「ぬん……。……お」

「おおおおおおおっ!? 湯呑みの底に富士山があるではないか!? ぬおっ!?」


 ふふ……それは湯呑みじゃない。ロックグラスといって、洋風のお酒を氷だけで飲む時に使う湯呑みなんだ。


「湯呑みなのか?」


 湯呑みじゃない。でもお前に説明するにあたって、適切な名称が湯呑み以外思い浮かばなかった。

 とにかく、これは冷たい飲み物に使う物なんだよ。早速ウイスキーを入れてみよう。


「うい……すき……?」


 そうそう。


「初もの好き?」


 ウイ好き(スキー)じゃない。酒だ。具体的に言うと今グラスに注いでいる飲み物だ。


「おお……底におる富士山に橙色が落ちて美しいな。まるで初日の出に照らされているかのようだ」


 初もの好きを回収すな。

 ふふ、そのグラスいいだろう。前々からほしいなーと思っててさ。私も自分への誕生日プレゼントにこれを買ったんだ。

 乾杯しようぜ!


「うむ! では杯を高く掲げようぞ!」


 おう!

 えー……乾杯の音頭は、


「巡り巡りてゆく道に 連れ立つ友の声ぞあり」

「生くるも死ぬも我のみなれど いかでその音に喜ばん」

「乾杯!」


 か、かかか乾杯!

 うおお、いきなり武士になるな!


「某、武士であるが……ぬおおっ! なんぞこの酒は! 喉が焼ける!」


 脳細胞も満遍なく焼けるぞぉーっ! 今夜は飲もう! な!

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