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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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生きている実感

 書くことないな……ハムスターについて書いてもいいんだけど、今はまだ接触禁止期間中なのでそんなたいそれたことは書けない。そうそう、早速回し車を使ってくれたよ! 嬉しかったです。


 しゃあない。こういうときには〝お題〟を求めよう。えーと、お題……ランダム……。


 出た! じゃん! 〝生きている実感〟!!


 ……。

 …………。

 ………………。


「どうした、大家殿。雪隠に間に合わなかったような顔をして」


 何も漏らしてねぇわ。

 時に武士よ。お前、どういう時に生きている実感が湧く?


「ぬ?」


 武士は不思議そうな顔をしたあと、大きく深呼吸をした。そして胸に手を当て、すぐにでも国歌斉唱しそうな凛々しい目をしたあと……。


「今」


 そう言った。そうだな、息しているの自覚できたもんな……。


「いかなる意図ありし問いぞ」


 そんなふうに聞かれるとちょっと答えにくいな。えーとね、たとえば仕事終わりにキンキンに冷えたビールを飲んで、「あ~! 生きてる~!」って思うあの感覚? そういうのをお前はいつ感じるのかなって。


「つまり生命の躍動を感じる時とな。難しい問いであるが、うむ……」


 武士は少し考えたあと、おもむろに両手を床についた。そしてゆっくりと両足を持ち上げると、そのまま静止する。おお、逆立ちだ!

 だが私が褒めようとした瞬間、ハムスターが巣箱から出てくる音がした。思わずそちらに目を向けようとする武士。崩れる体幹。倒れてくる筋肉の塊を避けようとするも、テーブルの足に引っかかる私の体。迫る武士のケツ。真っ暗になる視界。

 ものの三秒で現代美術顔負けのユニークな構図ができあがったところで、武士が呟いた。


「少なくとも今ではないな」


 そっかそっか。

 じゃあ、どいてくれ。今私の目前にお前のケツと死が迫ってるんだ。

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