家族プラスワン
「家族になりたい」
突然、武士がそんなことを言った。え、何? 福山雅治の歌?
「はむすたぁと」
諦めていなかったか……。
だめだだめだ! あの子らは寿命が短いんだ! あっというまにお別れの時が来て悲しくなるぞ!
「しかし、その出会いを悔やむことは決してないだろう」
お、今日は食い下がるな。
いやいや、生き物を飼うってのは大変なんだぞ? しかもハムの者なんて犬や猫と違って体が小さい分、気温とかの影響もしっかり受けやすいんだ。人間に依存する部分も大きい。これはどの動物にも言えることではあるが、命を引き受ける責任を持たなきゃいけないんだぞ?
「然り。ゆえに某も、ここ最近ずっと貸本屋にてはむすたぁについて学んできた」
なに、ハムスターの飼育書を……!? お前、ここ最近ずっと図書館に通い詰めていると思っていたら、そういうことだったのか。
ぐ……途中で飽きたとかってのはナシだぞ? お前には世界が広がっているが、ハムにはお前しかいないんだ。
「無論。そのこともこの書に書いておった」
病気もするぞ。
「それも書いておった」
掃除もしないといけない。
「書いておった」
あ、これ全部本を読み込んでいることで完封されるやつですね。ええー……?
……なんでそんなにハムスターを飼いたいの?
「あれらはまことに愛らしい。よちよちと歩き回り、はむによっては手のひらの上で眠る子もおると聞く。愛い……小さきいのち……」
……。
…………。
お前、世話、できるな?
「うむ」
私はどうしても仕事があるから、面倒をみるのはお前になるよ。それでもいい?
「うむ」
……それじゃ、うん。ペットショップ、見るだけ見に行ってみるか?
「! よいのか!」
見るだけだからな! 見るだけ!
「うむうむうむ! 実は既に目をつけておる子がおるのだ! いと愛らしき灰色のちびすけ……!」
早ぇよ、行動がよ! だいぶ心決まってんな!
いやいや見るだけだから! 見るだけだから!!