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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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フリマ2

 フリーマーケットの探索は続く。


「次はあれが気になるぞ」


 意気揚々と武士が指差した先にあったのは、木彫りの熊が鎮座する店でした。アッ、嫌な予感がする! 家にあってもなくてもいいのにこういう場所だからこそつい買っちゃってあとで頭を抱える品がたくさん置いてある予感がする!

 しかし私が何か言う前に武士は走り出していた。もう止まらねぇよ。


「こはなんぞ! 何を置いてある店ぞ!?」


「お侍さんねぇー。ここは家でいらんよーになったもんを売ってるよ」


「ほうほう、えー……リスとサイが来たりし?」


「リスとサイ?」


 あれはリサイクルのことを言いたいんだろうな、きっと。リス、サイ、来る……リスァイクル……リサイクル……。


「ふむ」


 武士は、頭に疑問符を浮かべる店主をさておき、商品のひとつひとつをじっくり眺め始めた。私は少し距離をとって後方から眺める。ブルーシートの上には、さきほど挙げた木彫りの熊のほか、流木だったり五月人形だったり観光地キーホルダーだったりが雑多に並べられている。私にはめぼしいものがないように見えたが……。


「主人、これは何に使うものだ?」


「ああ~、それは孫が置いてったもんでな。目の上につけるんよ」


「目の上に? なにゆえ?」


「まつ毛を長く見せるんよ」


 つけまつげか。確かに武士にとっては初めて見るものかもな。


「ほう、それはなにゆえ?」


「目がぱっちりして見えるようになる」


「ふうむ」


 武士は腕組みをして考え始めた。え? まさか……。


「いくらだ」


「百円」


「買った」


 買うな買うな買うないらんいらんいらん。


「帰ったぞ、大家殿」


 帰ったぞじゃねぇんだわ。いらねぇぇぇぇだろ、つけま。なんで買ったんだよ。


「目がぱっちりして見えるようになるゆえ」


 いるかよ、お前にその機能。


「ほしい年頃」


 絶対ただの好奇心だろうが。




 結局、あのあと特に何も買わなかったので、本日のフリマの戦利品はつけまつげ一品のみとなった。まつげで空を飛べそうなほどの武士が爆誕したのは、また別のお話……。

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