フリマ
そういうわけでフリーマーケットへとやってきた。相変わらずここには、フリーマーケットからしか発生しない謎の活気に満ちている。
「おお……見ろ、大家殿! 着物が一山百円で売られておる!」
そんな玉ねぎみたいな売り方はしてないよ。一着百円な。それでもめちゃくちゃ安いけど……。
「少々腹は出そうだが、夏によさそうだ」
いや女児用ワンピースじゃねぇか! 着ようものならド変態の誹りは免れねぇぞ!
「問題ない。袴もはく」
はいたところで焼け石にマグマなんだよ。警察が小走りで駆け寄ってくる未来しか見えない。
つーかここ、こども用のスペースじゃん。ほらほら、別の店行くぞ。
「んぬぬ。ならばあちらはどうだ?」
おお……かわいらしいピアスやイヤリングの店。いいな。女性客が列をなしている。
でもお前、ああいうのも身につけるのか?
「着飾りたい年頃である」
そっか、なら仕方ないな。じゃあ覗いてみようか。
太陽の光を受けてきらきらと輝くアクセサリーたちを前に、それを見るお客さんの目も輝いているように見える。さて、武士はどんなアクセサリーを手に取るのだろう。
……そういえば、江戸時代のアクセサリーって何があるの?
「かんざし」
ここにはないな……。
「女将よ、かんざしは作っておらぬのか」
「えっ? そこになければないですね……」
「見当たらん」
「ではありませんね……」
武士は眉間に皺を寄せて悲しそうな顔をした。私を見ながら。
いいえ、知りません。私とお前は他人です。




