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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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引き続き万年筆

 引き続き、万年筆の話です。


「なるほど、某は今得心した」


 私が作業を続けるのを見ていた武士が、ぽんと手を打った。


「それで大家殿は、よくぱちんこで万年床の絵を見ておったのだな」


 ぱちんこじゃなくてパソコン、万年床じゃなくて万年筆な。ちょっとずつ間違って、まるきり違う描写にするな。

 でもまあそうだよ。いい万年筆がほしくてインターネットで探してたんだ。


「良いのは見つかったか?」


 うん、いくつか目星はつけたよ。

 たとえばほらこれ。透き通った藍色に細かいラメが散らばってるの。


「おお……まるで夏の夜空のごとき美しさである」


 そうだろ。そんでこっちは、鮮やかな緑が綺麗な万年筆。


「うむ、初夏の若葉を思わせるな」


 とまあこのように素敵な万年筆はいくつか見つけたんだけど、ひとつ悩みがあってさ。


「ほう。その悩みとは?」


 万年筆に文字を彫ることができるんだけどさ、何を書こうか迷ってるんだよね。


「ふむ。名を彫ればよいのではないか?」


 まあそれが普通だな。でも私、自分の名前がそんなに好きじゃないんだよね。


「ぬぬう、ならば他の案を出すべきだな」


 頼む。


「では某の名を彫るがいい」


 いや……。

 いや……それは……ちょっと……。


「ちょっと良き案?」


 嫌だな……。


「嫌か……。なんと身勝手な」


 そんなことないだろ。順当に生じる素直な気持ちだろ。


「ならば大家殿にとって特別な言葉を彫るべきであろう。何かないか?」


 特別な言葉か。うーん……。


「友……愛……一生……不滅……」


 在りし日の暴走族みたいな万年筆できちゃう。


「まあ急ぐものでもなかろう。ゆっくり考えるといい」


 そうするか。


「明日までに決まらんかったら、某の名にするがいい」


 全然猶予ないじゃん。お前の名前彫るぐらいなら友愛一生不滅って彫るわ。

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