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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
555/677

丁寧な暮らしを

 朝――小鳥のさえずりと共に目を覚ます。青空はどこまでも澄み渡り、五月の風が私の頬を撫でた。

 ベッドから起き上がり、ゆっくりと伸びをする。うん、今日もやっていけそうだ。

 ベランダに出しているアデニウムに挨拶をする。土の乾き具合を見て、水をやるかどうか決めるのだ。今日はまだいらないかな?


 朝食は昨日作っておいたスコーンにしよう。買っておいたジャムを使うのが楽しみだ。牛乳を温めている間に準備をしていると、そっとお皿を差し出してくれた手があった。

 武士だ。


「おはよう子猫ちゃん。昨夜はよく眠れたかい?」


 ウワーーーーーーッ!!!!!(絶望)

 ひでぇ悪夢に飛び起きた。なんで? 途中まであんなに素敵な感じだったじゃん。どうしていきなり劇物を混ぜてきたの?


「なにごとかー!?」


 ここで私の悲鳴を聞きつけた武士が、横滑りしながら部屋に飛び込んできた。が、残念ながら我が家に横滑りできるほどのスペースはないため、武士は壁に足をぶつけて悶絶することになった。なんだこの部屋。アホしかいないのか?


「何が起こったのだ」


 なんでもないよ。丁寧な暮らしを夢見てただけ。


「丁寧な暮らしをしているとかような声をあげるのか?」


 あげるよ。


「息をするように嘘をつくではないか」


 つまり私にはキラキラ丁寧な暮らしは向いてないってことだよ。


「どんな夢を見たのかとんとわからんが、否である。大家殿はきっと丁寧な暮らしができる」


 お。というと?


「まず、朝起き上がる際には横向きになり、両腕をしっかり使って体を起こす」


 ふんふん。


「そして物を取るためにかがむ折には、腰を曲げるのではなく、膝を曲げて体を近づけるのだ」


 おお、これはちょっと慣れるまで膝にきそうだな。


「また、包丁を使う際には腰が曲がりやすくなるものだ。あえてへそを前の台に押し付けると、腰への負担が少なくて済むぞ」


 はー、なるほどな。ってこれ……。


 腰に丁寧な暮らしやないかい!


「ぬはは」


 あっ、叫んだら腰痛い! くそっ、加齢!

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