仲間を呼ぶスナップエンドウ
やっと風邪が治ったので出勤した。生温かく迎えてくれた職場の人々は、GWという戦争を生き残った帰還兵のような表情でした。ほんまお疲れ様でした。
「いいのよ、いいのよ~。これ食べて栄養つけてね」
そう言って職場のマダムから手渡されたのは、スナップエンドウだった。畑でたくさん収穫できたはいいものの、余ってしまったからもらってほしいとのことだった。
もちろんありがたく貰い受け、ほくほく顔で帰宅。すると武士が緑色の野菜で満たされた袋を持ってきた。
「大家殿、よくぞ本日も勤めをこなし帰ってきたことよ。ほれ、ご近所の奥方より賜りし豆である。すなっぽぅえんどうだそうだ」
おい、いい発音だなぁ。つかお前もスナップエンドウもらってきたのか。私もなんだよ。
「ぬ、まことであるな。これで夕餉は決まりであるな」
まあちょっとしたおつまみから、ふわふわたまごのスナップエンドウ丼ぐらいにはなったね。お、ご飯炊いてくれてるじゃん。あんがとあんがと。
それじゃ、ちゃちゃっと大家さんに家賃払ってくるわ。
「ぬ? 大家殿はここにおるのに大家殿に金を払うと……?」
その大家殿ってのはお前が勝手に呼んでるだけで、ここのアパートの大家さんはちゃんと別にいるんだよ。
「そうだったのか?」
当たり前だろ。
「では大家殿は某を騙して……?」
騙すも何も一度もお前から家賃徴収したことないだろが。
「長屋の商売で潤っているのかと」
潤ってたらスナック菓子の値上がりにここまで動揺してないんだよ。じゃ、行ってくる。
「うむ、気をつけるがよい」
ただいま。
「よくぞ戻った」
スナップエンドウもらってきたよ。
「三袋目ではないか。丼の次は何になるのだ?」
私たちまで取り込まれスナップエンドウの仲間になる。
「急に雑なことを言うでない」




