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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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小さな守り神

「ぬ」


 ベランダに出ていた武士が、何やら見つけたようだ。ぬーぬー言いながらベランダで身をかがめている。どうしたのだろう。すね毛をかき分け美しい花が咲いたかな?


「大家殿、今体の調子は良いか? 良いのであれば、見てほしいものがあるのだ」


 なんだなんだ。こっちまで持ってこれるようなものなら見てもいいよ。


「ならば連れてまいろう」


 連れて……? 何、もしかして動物とか虫? だめだめ、そんなもん連れてきちゃ。対応できる体力があるときならまだしも、風邪引いてる今はちょっと。


「さして問題はないだろう。赤子の蜘蛛であるがゆえ」


 赤子の蜘蛛……?

 私が眉をひそめて返事を保留している間に、武士は植木鉢を片手に部屋へと戻ってきた。植木鉢には例のアデニウムがある。


「ほれ、ここだ」


 武士が指差す先に目を凝らす。そこにいたのは、大きさ1ミリ程度の半透明の蜘蛛。か細い糸で編まれた小さな巣にちょこんと乗っかっている。


「どうだ、まことに愛いであろう」


 ……私は蜘蛛がそれほど得意ではない。何なら黄色と黒のしましまの蜘蛛は、見るだけで震え上がってしまうほどだ。

 それでもこの蜘蛛はなんというか、健気で愛らしく思えたのである。やはりなんでも赤ちゃんはかわいいものなのだろうか。


「うむ、赤子は愛らしい。しかもこの蜘蛛はどうやらあで……あで……木助きすけに害をなす虫を食べてくれるそうだ」


 アデニウムに名前がついた。へえ、そうなんだ。まあ蜘蛛は益虫って言われるもんね。

 じゃあしばらくはそのアデニウムにゆりかごになってもらおうか。


「うむ、それがよかろう。よかったな、蜘蛛吉くもきち


 名前がついた。


「あとは水やりの際にもろとも流してしまわぬよう気をつけねばな」


 お前ナイアガラの滝もかくやってぐらい勢いよく水あげるもんな。

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