表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
545/584

富士登山

 今も昔も、富士山は日本人の憧れと信奉の的である。ただ高いだけではなく、他の山の追随を許さない唯一の円錐形の山体の優雅さは、見る者を圧倒し魅了する。

 もちろん、武士も例外ではない。


「富士山に登りたい」


 軽々しく言ってくれおるわねぇ!

 無理とは言わないけど、思い立って登れるものじゃないと思うよ。私登山の経験ないから知らんけど。


「であろうな。ならば富士塚ならどうだ?」


 富士塚? なにそれ。


「その名のとおり富士山を模した塚である。これに登れば、富士山に登ったのと同じご利益が得られるのだ」


 へー、そんなんがあるんだ。


「うむ、富士山に登るのは容易ではないからな。その上、女人は入山することすらあたわん。しかし、老人や女人とはいえ富士山のご利益は賜りたいものだろう。そこで生まれたのがこの富士塚と聞く」


 お、調べたら出てきた。へー、近かったら全然行ってみても……。

 おい、都内100カ所余りにあるって書いてあるんだけど! こんなあんの!?


「富士山への憧れ尽きることなし」


 これほどの数が今でも残ってるなんてすごいなぁ。大事にされてきたんだろうね。

 それじゃ早速行ってみる?


「そうしよう。しかし……」


 どうした?


「銀之丞たちも参拝してよいだろうか」


 シルバニアファミリーたちにも富士参りさせようとしてる?

 えっと……ちょっとびっくりされるかもしれないな。


「やはりそうか。そうなると……」


 武士はおもむろに粘土を取り出した。こねこねしたあと、そっと床に置く。まるで小さな山だ。


「富士塚」


 簡易すぎるだろ。


「大家殿も登るがよい」


 おい、人差し指と中指でとことこするな。さすがにこれは富士塚にカウントされねぇだろ。

 ……。

 いいか。富士山の懐は日本一でかいだろうし。


「うむ!」


 こうして本日、私と武士と銀之丞たちは富士登山を達成したのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ