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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
535/585

自転車!

 ようやく春らしくなってきたかと思う今日この頃。でも多分一瞬で夏になるんだろうなとも思う今日この頃。

 ちょっと外に出てみないか? 私はそう武士に呼びかけた。


「否」


 断られた。なんでよ。絶対暇だろうがよ。


「某は多忙である。今、ハムの者を愛でておるのだ」


 寝っ転がってXに上がってるハムスターの動画を眺めてるのは暇のうちに入るだろ。いいから外行こうぜ。


「否~」


 転がりながら私の手を逃れている。これが江戸時代には帯刀を許されていた男の姿か?

 よっしゃ、足首掴んだ。このまま玄関まで引きず……クソ重ぇ!!!! 筋肉の塊? もしくは石???


「ハムの者~」


 往生際が悪い。歩け。お前の足は何のためについてるんだ。


「明日を目指すため」


 しゃらくせぇ。

 しかしさすがは成人男性。玄関まで到着した武士は、すんなり靴を履き始めた。


「して、何用であるか?」


 うん、実はお前に見せたいものがあるんだ。


「なんぞ?」


 まずアパートの下まで降りようね。んでもって……じゃん! こちら!!


「おおっ! これは……!」



「……削ぎ落とされた、えれきてる車……?」



 自転車だよ!! つかお前、今まで道行く自転車のコト、自動車の削ぎ落とされた部分だと思ってたの!?


「これはどうしたのだ?」


 うん、会社の人がもう使わないからって譲ってくれたんだ。で、いい機会だし武士にプレゼントしようと思って。

 普通のママチャリだけど結構きれいじゃない? 大事に使えよ。


「おお! かたじけない……! 某、早速乗ってみてもよいか?」


 ああ、乗れ! 存分に乗れ!


「では、いざ!!」


 自転車に飛び乗る武士。勢いははなまる百点満点だ。しかし自転車に対してやるのは違うだろう。

 武士は自転車を巻き添えにして派手にすっ転んだ。


「ぬう……!」


 武士は悔しさと痛みに顔をしかめて空を見上げている。


「不良品か……?」


 そんなわけねぇだろ。

 こうして、武士の自転車特訓が始まったのである。

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