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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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花見

 豆苗を買うと、育てる段階で武士が必ず舞を舞う。埃も舞うのでやめてほしい。


「この舞を踊れば、種にカビも生えずよく育つ気がする」


 種に白いふわふわのカビが生えないのは、私とお前が水を適量替えているからです。踊りのおかげではありません。

 まあなんでもいいや。武士、花見に行こうぜ。


「今は夜だが?」


 昼は私が仕事じゃん。


「然り」


 車乗れよ。ジュースも持っていこうぜ。


「酒は?」


 私が運転で飲めないので却下。シラフで酔え。


「ぬぅん」


 こうして、夜桜を見に行くことになった。




 桜が咲けば、花見をせねばならないという焦燥感に駆られる。理由はわからない。もう一部の日本人のDNAに刷り込まれているんじゃないかとすら思う。

 夜空に花びらが散るこの景色は、何度見ても幻想的で胸が踊るのだ。


「よい夜だ」


 武士がオレンジジュースを片手に言う。


「大家殿と桜を見るのは何度目だろう。いずれ、江戸で見た桜の数よりも多くなるのだろうか」


 そうかもな……。最近、マジでそうなるんじゃないかって思うわ。そろそろガチで戸籍取得に動くか。

 まあ桜見ながら考えることじゃないか。ほら、コンビニの三色団子。


「ありがたい。ううむ……あらためて、これほど容易く甘味が手に入るとはな。この世界は恵まれておる」


 それは私も思うよ。でも、そうやって思えるのも桜を美しいと感じられる心があってこそ……。違うか?


「某は関係ないと思うぞ」


 だんご返せ。


「ならぬ。もう食べた」


 しかも二本食いやがってコイツ。


「ほれほれ、大家殿は桜に夢中になっているがよい。某はおにぎりに移る」


 もう食い気が先行してる。


「つなまよ」


 江戸では食べられないものを求めてる。


「桜は江戸でも見られるからな」


 そういう方向で桜がおにぎりに負けることってあるんだ。

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