表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
519/586

引っ越し

 3月下旬の土曜日。本日卒業される方も多いことだろうと思います。まことにおめでとうございます。

 春は節目であり、別れの季節だ。だけど別れは出会いの始まりともいうわけで、とかくにこの時期は人が動く。


 で、武士はいつ江戸に戻るの?


「その話は先日済んでおる」


 済んではないと思うけど……。

 幸い私は転勤がある職種ではないので、来年度もここから微動だにしない予定です。変わり映えのない日々は素晴らしいね。

 でもどうしようかなぁ。大学生の頃からこのアパートに住み続けてるし、そろそろ引っ越すのもありかもしれない。


「ぬ、家移りを考えておるのか?」


 本当に今ふと思いついた。計画性は何もない。

 武士はもし引っ越しするなら、どんな場所がいい?


「うむ、川の近くなどどうだ? 朝日や夕日に照らされて赤く染まる川は実に美しいものだ」


 意外に風流な発案をするね。うーん、川かぁ……。でも川の周囲に集まる人って変な人多くない?


「そんなことはないと思うが。川にかような偏見を抱いておる者、初めて見たぞ」


 川の近くを散歩すると、いつも声のでかい人に絡まれて怖いんだよ。

 他に候補ない?


「ならば山の近くはどうだ? 喧騒から離れ、四季折々に色を変える山を眺めながら過ごすのはいいものだぞ」


 うーん、山かぁ……。でも山の近くに住む人って閉鎖的じゃない?


「場所によると思うが」


 私が山に囲まれたところで生まれ育ったせいかもしれない。


「ならば大家殿の故郷が閉鎖的だったのだ」


 人の噂なら光回線よりも速かった。


「わかった、わかったから」


 他は?


「広い公園の近くはどうだ? 気軽に散歩ができるぞ」


 うーん、広めの公園かぁ……。でも夕方以降の公園にいる人、変な人多くない?


「その偏見は間違っておらぬ」


 だから結局いつも、この家のままでいいかなってなっちゃうんだよね……。


「住めば都とはこのことであろうなぁ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ