引っ越し
3月下旬の土曜日。本日卒業される方も多いことだろうと思います。まことにおめでとうございます。
春は節目であり、別れの季節だ。だけど別れは出会いの始まりともいうわけで、とかくにこの時期は人が動く。
で、武士はいつ江戸に戻るの?
「その話は先日済んでおる」
済んではないと思うけど……。
幸い私は転勤がある職種ではないので、来年度もここから微動だにしない予定です。変わり映えのない日々は素晴らしいね。
でもどうしようかなぁ。大学生の頃からこのアパートに住み続けてるし、そろそろ引っ越すのもありかもしれない。
「ぬ、家移りを考えておるのか?」
本当に今ふと思いついた。計画性は何もない。
武士はもし引っ越しするなら、どんな場所がいい?
「うむ、川の近くなどどうだ? 朝日や夕日に照らされて赤く染まる川は実に美しいものだ」
意外に風流な発案をするね。うーん、川かぁ……。でも川の周囲に集まる人って変な人多くない?
「そんなことはないと思うが。川にかような偏見を抱いておる者、初めて見たぞ」
川の近くを散歩すると、いつも声のでかい人に絡まれて怖いんだよ。
他に候補ない?
「ならば山の近くはどうだ? 喧騒から離れ、四季折々に色を変える山を眺めながら過ごすのはいいものだぞ」
うーん、山かぁ……。でも山の近くに住む人って閉鎖的じゃない?
「場所によると思うが」
私が山に囲まれたところで生まれ育ったせいかもしれない。
「ならば大家殿の故郷が閉鎖的だったのだ」
人の噂なら光回線よりも速かった。
「わかった、わかったから」
他は?
「広い公園の近くはどうだ? 気軽に散歩ができるぞ」
うーん、広めの公園かぁ……。でも夕方以降の公園にいる人、変な人多くない?
「その偏見は間違っておらぬ」
だから結局いつも、この家のままでいいかなってなっちゃうんだよね……。
「住めば都とはこのことであろうなぁ」