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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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武家のおうち

 最近、武士のシルバニアファミリーが勢力を広げている。


「ここは玄関、ここは控えの間、ここは二の間……」


 そうぶつぶつ呟きながら、床の一角に敷き詰めた画用紙に間取りを描き込んでいたのが、大体一週間前のこと。最初こそひとときのお遊びかなと放置していたが、いくら経っても紙は撤去されることはなく、むしろより細やかに、より豪盛なものになっていた。今は折り紙を使った家具までいくつか鎮座している。

 そしてそこに住まうのは、武士のシルバニアファミリーたちだ。どんぐり、にぼし、銀之丞。


 シルバニアファミリーに新しいおうちが仲間入り! 格式高い武家のおうち!


「そろそろ床の間に飾る掛け軸を考えねばならんな。大家殿、何か良い案はないか」


 本格的だなぁ。みんなが長生きできるように、鶴と亀の絵とかいいんじゃない?


「おお、良いな。早速作ろう」


 そう言うと武士は掛け軸の作成に着手した。数分後、ちっちゃな細長い紙にムキムキの鶏とムキムキの亀が描かれていた。

 鶴は?


「うろ覚えで描いてみたら鶏になってしもうた……」


 鶴にトサカはないよ……。

 でもムキムキなことに目をつぶればよく描けてるよ。早速飾ろうな。

 つか厚紙で壁まで作ってるんだね。細かいな。


「ふふん。某は凝り性であるからな」


 いや、ほんとすごいよ。ただでさえ狭い我が家が圧迫されていることを除けば。


「襖障子も作りたい。大家殿、金色の紙を使おうと思うのだが、ここに描く絵は何がいいだろう?」


 おお、これまた難題だな。うーん……。


「この襖屏風は武家にとって重要でな。訪れた者に武家たる威圧感を与えるものだった」


 あー、そんなら「おおっ!」と思わせられるような図柄がいいのかな。じゃあ動物園を描けばいいんじゃない?


「動物園? しかし、かの場所には愛らしき獣も多かろう」


 でもお前という絵師の手にかかれば、みんな筋肉モリモリマッチョマンになるから……。


「ならばよいか」


 おう。

 それにしてもこの子たち、いいところ住んでるな……。私達よりいい暮らししてない?


「大家殿も某が描いた掛け軸を部屋に飾るか?」


 そこは別に羨ましくないんだよ。

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