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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
514/588

ほわいとでー

 ただでさえバレンタインデーの精神的恩恵が少ないのだから、ホワイトデーへの意識が疎かになるのは当然の流れである。

 だが、彩りイマイチなリーマン生活。できるだけイベントは回収していきたい。


 武士、ホワイトデーすっぞ!!


「ホワッツ?」


 疑問を抱くな! バレンタインデーの対になるイベント、ホワイトデーだよ!!


「つまり改めてお返しをする日か。持ちつ持たれつというやつだな」


 そうそう。


「しかし、我らは誰にお返しをするというのだ?」


 そりゃあお前……。

 ……。


「……」


 ……。


 よし、カレー作るぞ!


「承知!」


 豚肉と鶏肉は焦げ目がつくまで炒め、圧力鍋にイン!


「大家殿! 野菜を切り終わったぞ!」


 でかした! 肉に圧をかけている間に、たまねぎと人参をこれまたしっかり炒める! 許せ、じゃがいも! うちのカレーには居場所がない!

 そんで圧をかけ終わった鍋に野菜を投入! ファンタスティック! ついでに冷凍のほうれん草もじゃかじゃか入れて、所定の時間煮込み、火を止めてバーモントカレーのルーを入れる!!


「だが大家殿、これではいまいちホワイトデーではないのでは?」


 安心しろ! そこでここに板チョコを割ったものを追加!


「おお!」


 チョコの甘味とカカオの深みでカレーにより味わいが出るぞ! 多分!


「試したことがないのか?」


 だってチョコはチョコで食べたいし……。


「ああ……」


 とにかく続行! 時々かきまぜながら弱火で煮込む!

 イグザクトリー! 完成!! さあ食べようぜ、武士!!


「うむ、ちょうだいする! いただきます!」


 いただきます!


 ……。


 うん、普通にうまいな。


「うむ。いつものかれーである」


 うん。


「ならばチョコはチョコとして食べてよかったな」


 うるせぇ。ありがたく食え。

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