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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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写真術

 最近、よく武士と一緒に図書館に出向いている。そこでふと気が向き、写真撮影に関する書籍を借りてみた。本格的なカメラを持っているわけじゃないが、スマホでも気軽に写真撮影ができる昨今、プロのテクニックをかじっておくのは有益であると思ったのだ。


「某はヨシタケシンスケ殿の書籍を借りるぞ! もうぬげない!!」


 ふむ……撮影する時は腕を固定する、ただど真ん中に被写体を捉えればいいわけじゃない、空間をうまく取ることで写真に広がりが生まれる、どんな画を撮りたいか頭の中でイメージしておく……。

 うん、なんだかいい写真が撮れる気がしてきた!


「ぬはははは、これはおもしろいぞ大家殿! 見てみろ!」


 あ? お前が読んでるのは絵本だろうが。こども向けの絵本読んで大人が笑うとかんふふふふふふwww




 そういう背景があったうえで、一度姉のご自宅にお邪魔した。姉のうちには、今限りなく赤ちゃんに近いお子さんがいる。だが、お子さんが小さい時期はほんの一瞬。その一瞬を私の撮影技術(付け焼き刃)で切り取れたらと、スマホのカメラを構えたのだ。

 それがこの写真群です。どう思う、武士。


「うむ、よく撮れておる。正直意外であった。知識があると、これまでとは違った景色が写せるのだな」


 へへへ。褒めてもらって光栄だな。


「だが……」


 だが?


「どの赤子も顔を真っ赤にして泣き叫んでおる……」


 姉のお子さん、絶賛人見知り発動中でさ……。私が同じ空間で息をするのも嫌みたいだった。


「そうか。ならば次は、こどものあやし方に関する本を借りねばならんな」


 このまま精進していったら1年後にはスタジオアリスに就職できそうだね。

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