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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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ピタゴラスイッチ

 家に帰ったら、何か始まった。


 ドアノブに括り付けられた糸が引かれ、その先にあったスプーンが跳ねる。弾みでバウンドしたピンポン球がうっすら開いた冷蔵庫に入ったかと思うと、中からゴロゴロと缶詰が出てきた。それがひっくり返ったスリッパに当たると、目覚まし時計のボタンが押されてジリジリとやかましい音を立てる。


 すると、その音を合図に武士が部屋の中から出てきた。


 ……何これ。


 尋ねると、武士は真顔で言ってのけた。




「ピタゴラスイッチ♪」




 ウゼェーーーーーーッ!!!!


 今世紀最大にウゼェ!!


 っつか冷蔵庫開けっぱにすんなや!!



 ブチ切れる私だが、それにもすっかり慣れてしまった武士では動じる気配も無い。せっせと後片付けをしながら、彼は語った。


「かなり回数を重ねたのだぞ? 特にこの“すぷーん”がなかなか難儀でな……。いやぁ、うまくいってよかった。何度も心が折れそうになったものだ」


 そのまま折れてくれて良かったのに。


 まあいいや。腹が減ってたら気も立つし、飯にしよう。武士、ご飯炊けてる?


「……」


 ……え、何その顔。

 なんで何も言わないの?


 武士は、そそそと炊飯器の横に立つと、ピッとボタンを押した。


「ピタゴラスイッチ♪」


 今世紀最大二度目ーーーーーーッ!!!!!!


 窓から武士をぶん投げてやろうと思ったが、アホみたいに体幹を鍛えているヤツではビクともしない。筋トレしよう。私は、そう心に誓ったのであった。

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