最近のこども
最近の子は、コツコツとレベル上げをしたり、ソウルライクな高難度死にゲーが全然できないのだと聞いた。短時間でドーパミンを出せるコンテンツが氾濫する昨今、わざわざ時間をかける必要性を感じないのだとかなんとか。
果たして本当にそうだろうか。
「大家殿、おとなのげーむを買うてくれ」
夜。武士が大真面目な顔で私にそう言ってきた。
「あと、まい……舞の玄人」
前者も後者もさっぱりわからん。一個ずつ解決していこう。
まず、おとなのゲームを買ってくれってなんだ。いかがわしい話か。
「とんでもない! 友人とするげーむだ!」
友人とするゲームか。えー、おとな……おとな……。
何かの略称である可能性があるな。あー……。
……もしかして、フォトナ? フォートナイト。
「おそらく……」
お前が判定してくれなきゃこの問題は迷宮入りするんだよ。ほら、これ。大勢のプレイヤーが入り混じって戦うゲーム。
「おお、まさしくこれだ!」
よかった。じゃ、次のゲームね。
「舞の玄人」
舞子さんの育成ゲームか? 絶対違うだろ。えーと、これも間違えて覚えてるんだよな。まいのくろうと。まい、の、くろーと……。
わかった、マインクラフトだ!
「おそらく……」
だから正解判定はしっかりやってくれ。
マインクラフトはこれ。色んなブロックを積み上げて物を作ったり開拓したりするゲーム。合ってる?
「うむ! 大家殿はなんでも知っているのだな!」
もうお前の覚え間違い専用の神経回路が、私の頭にできている気がするよ。
とにかくフォートナイトは無料でできるし、マインクラフトもそんなに高い値段じゃない。買うのは全然オッケーだよ。
「ありがたき! とはいえ、某の友はかなりの玄人でな。某は昼夜練習せねば到底追いつかんだろう」
あ、そうなんだ。でも例によって小学生だろ? なら上手いといっても全然追いつけるんじゃ……。
「おとなのげーむでは、全国大会とやらに出たそうだ」
……え?
「動きもまるで演劇役者そのもの! ばったばったと敵をなぎ倒すぞ! 聞けば、幼少の頃よりおとなのげーむを始め、日夜敵の動きと自分の行動を反省し研究しているそうだ」
……。
ご友人、小学一年生とか二年生だよね?
「うむ!!」
……。
どれだけ時代が変わろうと、ひとつのことに熱心に取り組むタイプはいる。〝最近の若者〟と一括りにしてはならないのだ。




